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第9回 雨水を利用しよう

丹沢の大倉尾根、雑事場と見晴茶屋の間、道の両側に山火事で焼け焦げた跡がある。

あれは十数年前のことである。久しぶりに大倉尾根を登ろうと、渋沢駅から大倉行きのバスに乗った。大倉に着くと、ヘリが3機大きな音を立てて旋回している。バス停前の店のおばさんが、心配そうにヘリを眺めている。「何事ですか」と尋ねると、「山火事!」とぶっきらぼうに言う。山の方に目をやると、確かに煙が立ちのぼっている。

これでは山に登れないなとあきらめてしばらく眺めていると、しだいに煙が小さくなって、ついに見えなくなった。ヘリもいつのまにかいなくなっていた。店の奥からおやじさんが出てきて、「電話で火が消えたと連絡があった。もう登っても大丈夫だ」と言う。そこで、予定通り大倉尾根を登ることにした。

雑事場まで登って一休みしていると、消防士が走って来て通り過ぎて行った。まもなく、水の入ったバケツを両手に持ってもどって来た。どうやら火事場はこの近くらしい。しかも、まだ火が完全には消えていないようだ。消防士の後を追いかけて行くと、きな臭いにおいがして、道の両側の木があちこち小さく燃えているのが見えた。消防士が二人、燃えている場所を探しながら水をかけている。バケツの水がなくなると、水を取りに走って行く。「手伝いましょう」と声をかけると、「いや、いい。行って、行って!」と、追い払われてしまった。

消防士は消火作業をしばらく続けてから、「もう大丈夫だな」「そうだな」と、何度も確認しあってから帰って行った。

私は邪魔者扱いされたので、多少機嫌が悪かったのだが、野次馬根性もあって焼け跡を見て回った。そして、まだくすぶっている所を一箇所発見した。私は自分の出番が来たとばかりに、おしっこを引っ掛けて完全に消してやった。

あれから十数年。先日、なんと、同じ場所で、また、火事になりそうな場面に出くわした。若い男が一人、雑事場のベンチでタバコを吸いながら休んでいる。私が、「おはよう」と声をかけながら近づいていくと、その男は、「おはようございます」と、丁寧に挨拶を返してから、私を避けるかのようにすぐに腰をあげ、ザックを肩にかけ、タバコを口にくわえたまま歩き始めた。その男の後ろ姿を何気なく眺めていると、その男は、なんと、火がついたタバコを投げ捨てたのである。私は反射的に、「こらー!」と、叫んでいた。

ニュースではあまり報道されないが、実際には、小さな山火事は頻繁に起きているらしい。私たちハイカーは気をつけなければいけない。

ところで、山歩きをしていると、ときどき消(防)火用水を見かける。私のホームグランドの丹沢では消火用水がどのような場所にどのくらい設置してあるのだろうか。

問い合わせてみると、管轄している平塚営林署でも秦野消防署でもわからないと言う。「設置したのは、林道を管理している地元の森林組合だから」だそうだ。消防署が知らないのでは消火に困るだろうといやみを言うと、「なぜ、そんなことが知りたいのか」と逆に問われた。「山を歩いているときに、もし、山火事に出会ったならば、その情報を基に消火作業ができる。山の雑誌に投稿して仲間にも知らせたい」と言うと、「調べて返事します」と言った。

その返事によると、設置箇所は林道の近くに丹沢全体で十九箇所であるという。丹沢全体で十九箇所とはあまりにも少ないのではないだろうか。数キロメートルごとにしか設置していないことになるのだから、それこそ焼け石に水である。しかも林道の近くだけにしか設置していないらしい。とするとブナ林などの自然林は山火事からは守られていないことになる。

山火事の原因のほとんどがハイカーの火の不始末らしい。そこで提案である。ドラム缶や使い古しの風呂桶をハイキングコースの各休憩場所に置いておけば、自然に雨水がたまるので、安い費用で、しかもふんだんに消火用水が確保できる。さらに要所要所に浄化装置を付けたものを置いておけば、飲料水として利用することもできる。なんなら、太陽光発電装置も付けて飲料水の自動販売機にすればいい。

最近、ハイカーが増えたため谷の水が汚れてきて、飲み水として適さなくなってきている。日本名水百選に選ばれた水場でさえ、「この水は飲めません」などと書いてある。今後は、山火事の被害を防止するためにも飲料水を確保するためにも、雨水をもっと活用する必要があるのではないだろうか。もっとも、火の始末や水を汚さないことの方が必要なのであるが。

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