次ページ  目次

経営相談どっと混む

第7回 山の歩き方は、グー、チョキ、パー

山小屋で数人が話をしているのを近くで聞いていた。一人が、静加重静移動とか、2本のレールとかと言っている。それを聞いている数人が一生懸命に復唱して覚えようとしている。テレビで放映した、山でバテない、ゆっくりと歩く方法についての話らしい。

何か変だなと私は思った。バテないゆっくり歩く方法? それを頭で覚える? 何を言っているんだろう。歩くペースは体で覚えるしかないだろう。そのためには練習するしかないはずだ。

以前私が行なった、街でできる練習方法を紹介しよう。マンションやデパートの階段を10キロ程度の荷物を背負って登るのである。同じ高さの階段が続いているので、山歩きのペースを体で覚えるにはうってつけなのだ。腕時計の秒針に合わせて足を運び、1階から屋上まで同じ速さで登る。速さをいろいろと変えて、自分にあったペースを探すのである。コツは、できるだけ力を抜いてチンタラ登ることだ。「チンタラ、ホイ。チンタラ、ホイ。チンタラ峠をあんよでホイ」と、これが私のバテない山歩きのペースである。

私も学生のころは、張り切って登って、よくバテた。何度か登っているうちに、ゆっくりと一定の速さで登るほうが楽でしかも早いことがわかった。まさに、ウサギとカメである。特に、登り始めは意識してゆっくりと登る。そうすると、しだいに体が慣れてきて楽になってくる。

次に、斜面の歩き方の練習方法について紹介しよう。山には斜面が多いが、街にはほとんどない。よって、斜面を歩き慣れていないので、山で滑ってケガをしやすいのである。ちなみに、階段は足を置く面が平らであるから斜面ではない。川の土手を利用して練習する。川の土手は勾配がかなり急だし、ケガの心配もあまりないので練習にはもってこいだ。

登り方は自然体で、つまり、外股で足を少し横に広げ、足のひざと足首の力を抜いて、ももを引き上げそのまま下ろすのである。この形と力を抜くのがコツである。鉄棒にぶら下がったときの状況を思い出せばよい。ももを引き上げたときには、ひざと足首はぶらぶらしている状態である。そして、上半身を少し前に移動させると足が振り子のように自然に前に移動する。そのままももの力を抜けば足が自然に下りる、という具合である。こうすると、余分な力がかからず疲れないうえ、足の裏全体が地面にフラット(密着して平ら)に着くので、フリクション(摩擦)が大きくなり滑りにくいのである。

濡れた斜面を登るときには、足の指で地面をつかむようにする。日常生活では、足の指を使うことがほとんどないので、指に力が入らず、滑ってしまうのである。足の指を開いてジャンケンのパーの形にして地面をつかむようにするのがコツである。

斜面の下り方は、登りとは逆に内股になって、ひざを少し曲げ、足の指で地面をつかむようにする。このときの足の指の形はジャンケンのグーである。

雪の斜面では、足をフラットに置くと滑ってしまうので、足は常に水平に保ち、靴のエッジを利かして登り下りする。登るときはつま先で斜面に蹴り込んで、ステップ(踏み段)を作りながら登る。下りはかかとで踏み込みステップを作りながら下る。あるいは横向きになって、靴の山側のエッジを利かして登り下りする。このときの足の指の形はジャンケンのチョキである。

凍った斜面では、アイゼンをつけなければ登り下りできない。緩斜面ならフラットに、急斜面ならエッジを利かして登り下りする。

以上、基本の歩き方の練習方法について紹介したが、実際の山では、無雪期でも雨で濡れた斜面に、また積雪期には雪と氷の斜面に、木の根や石ころなどが混じっているので滑りやすい。よって、足を下ろす場所と足の向きとを瞬時に判断し、体勢を整えて足を下ろさなければならない。よって、基本の歩き方をマスターした上で、実地練習をする必要がある。

バテずに、しかも安全に山歩きができるようになると、山歩きが楽しくなり、しだいに病み付きになって、山に金をつぎ込むようになる。次には、この点について注意しなければならない。

※ 『新ハイキング』誌、'99年2月に掲載されたものに加筆修正したものです。

Ⓒ 経営相談どっと混む

次ページ  目次