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第53回 単独行は安全で安心

誰もが単独行は危険だと言う。山を1人で歩いていると、「単独行は危険だから早く帰った方がいい」とわざわざ声をかけてくる人もいる。なぜ誰もがそう言うのだろうか。冬山を歩いているときに、ある大学の山岳部に出会った。「一人ですか」と聞くので「そうです」と答えると、口々に、しつこく、「単独行は危険だ」と言うので、その理由を聞いてみた。

「もし何かあったら仲間が助けてくれるだろう。一人ではどうにもならない」と言う。そこで、「何かって何ですか」と聞いてみた。すると、「例えば、滑落して大怪我をしたり、足をくじいて歩けなくなったり、病気になったり、道に迷ったり・・・」といろいろと言う。確かにその通りだと思う。しかし、「そんな時に、本当に仲間が助けてくれるだろうか」と私は疑問に思う。

大学の山岳部のように、しっかりしたリーダーがいて、メンバーも日ごろから訓練を行っているグループであれば、何かあった時には助け合うことができると思う。しかし、そのようなグループで山歩きをしている人たちはあまりいない。職場の同僚とか、学校のクラスメートとか、山歩き以外のスポーツや趣味の仲間とか、ママ友とか、町内会とかでグループになっている場合が多い。あるいは、一般募集に応募して参加したグループだったりする。

そういう人たちがグループで山歩きをする理由は、やはり「一人で山歩きをするのは危険だし、不安だから」「何かあった時には誰かに助けてもらえるから」なのである。おそらく、グループ山行の参加者は全員がそう思って参加するのではないかと思う。それはもちろん、山歩きをしたいからである。

筆者はかつて、知り合いから、山に行きたいのでリーダーになって欲しいと言われて、にわかリーダーになったことが何度かある。私がリーダーになれば、日帰りハイキングでも、当然、山行前に、メンバーと何度か会って、各自の装備について話す。リーダーとしてメンバーに求める最低限の準備について話す。そして、当然、山行当日に準備ができていないメンバーには、帰ってもらう。理由は他のメンバーに迷惑をかける恐れがあるからである。

逆に、メンバーからリーダーに求めるのは、通常、第1に何かあった時に、助けてもらうことであり、第2にコースを良く知っていて絶対に道に迷わないことである。要するに、この二つがメンバーの心配ごとなのだ。そこで私はメンバーに言う。「もし私が滑落したり、足をくじいて歩けなくなったり、病気をしたりした場合に誰が私を助けてくれるのか」と。当然、私を助けてくれる人は誰もいない。なぜなら、誰もそのための準備をしていないから。それだけではない。もしリーダーである私が動けなくなった場合には、メンバー全員も動けなくなる。なぜなら、道を知っている人は私以外誰もいないから。

かつて、私の方から日帰りハイキングに行かないかと数人を誘ったことがあった。正月休みに、毎日酒を飲んで、家でゴロゴロしているよりも、近くの低い山にみんなで登ってから風呂に入って、それから飲み会をしないかと誘った。全員が賛成してくれて、早速、その準備のための会合を持った。その時に、各自の準備だけでなく、私がいつも持って行く非常装備についてもみんなに話した。みんなに安心してもらいたいからである。

ところが、「非常装備が必要な山なら、参加しない」と全員が言ったのである。その山は大山である。正月には大勢の人が初詣に登る山であり、小学生も登る山である。しかし、何があるか分からない。どんな山へ行くにも非常装備は必要なのである。

このように、ほとんどの人は山へ行くのに非常装備を持って行かない。また、普段からジョギングをするなど、体力・体調を整えていない。そして、「グループで行けば何かあった時に誰かが助けてくれる」と思っている。全員がそう思って参加するのだから、何かあっても誰も助けてはくれない。なぜなら、「何かあったら私が助けてあげよう」と思って参加する人は誰もいないからである。

したがって、グループ山行よりも単独行の方が安全で安心なのである。自分の技術や経験、体力・体調に合った山へ行き、何かあっても、そのための準備をしっかりとしていれば、1人の方が良い。

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