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第51回 夏の低山歩きは異常にのどが渇く

暑い夏の日、西丹沢箒沢から檜洞丸に登った。西丹沢の夏はいい。沢がいくつもあって、きれいな水が流れている。沢では子供たちがきゃっきゃきゃっきゃ言いながら水浴びしている。

中学生のころ、クラスメートとこの近くの沢で泳いだことが思い出される。箒沢公園前のバス停で降り、目の前の橋を渡るとキャンプ場にでる。いくつもあるバンガローの間を抜けると沢に出る。沢沿いに登る。汗が顔からポタポタと足元に落ちる。登ってきた道を振り返って見ると、汗が落ちた跡が点々と続いている。熱中症対策は万全だ。塩飴をなめながら水を飲む。

夏の低山はとにかく暑い。暑いなんてものではない。熱い。体が熱いのだ。外気温が30度でも体感温度はおそらく40度以上になっているだろう。体が熱いときの体感温度はどう測ればいいのだ。頭がくらくら、くらくらする。足元がふらつく。ときどき気が遠くなりそうになる。しかし、どういうわけかこれが快感。もしかして俺はマゾヒストか。それともランナーズハイならぬクライマーズハイか。

しばらく登ると、汗をぬぐう手拭いがびっしょり濡れる。そこで、手拭いを絞る。また、しばらく登ると手拭いがびっしょり。また、絞る。これの繰り返し。濡れた手拭いをづっと使っているので、乾いた手拭いに交換した。濡れた手ぬぐいはビニール袋に入れてザックにしまった。少し休憩して、また、登る。すると汗をかく。汗をぬぐうと手拭いが濡れる。手拭いを絞る。こんなことなら、手拭いを取り換えなければよかったと思う。

標高が少しずつ高くなると、汗もあまり出なくなる。そして少し寒くなる。よく見ると、まるでどしゃ降りの雨の中を歩いたかのように全身が汗でびっしょり濡れている。これでは風邪を引くと思い、着替えることにする。下着から全部着替える。夏は簡単に着替えができるからいい。濡れた衣類はビニール袋に入れてザックにしまう。また登る。今度は快適だ。汗もあまり出ないし、体は暖かい。

ようやく頂上に着いた。しかし、あまりにも時間がかかってしまった。地図には西丹沢県民の森への分岐点から石棚山及びテシロノ頭を経て頂上の檜洞丸までのコースタイムは1時間20分と書いてある。しかし、2時間30分もかかった。地図に書かれているこのコースタイムは間違っていると思う。他のコースは私が歩いた時間とそう変わらないからだ。時々こういうことがある。コースタイムはあくまで参考にすぎないが、2倍も違うとはあまりにもひどい。

頂上で弁当を食べ、お茶を沸かそうとペットボトルを見たら、ほとんど水が残っていない。お茶を沸かすには足りないので、水の入ったペットボトルをザックから取り出そうとした。すると、いつの間にかザックの中のペットボトルはすべてカラになっていた。家を出るとき、500mlのペットボトルを4本ザックに入れてきた。それをすべて飲んでしまったのだ。わずかに残った水を飲んで、急いで下山することにした。

地図を見ると、1時間15分ほど下ればゴーラ沢に出るのがわかった。ここで沢の水が飲める。そう思うと気が楽になった。このコースは急坂なので気を付けなければいけない。あわてずにゆっくりと下る。しかし、30分ほどすると、のどが渇いて水を飲みたくなる。しかし、水はない。我慢するしかないのだ。しかし、どういうわけか我慢できないほどのどが渇く。なぜ、こんなにのどが渇くのか。少し異常だ。気持ちの問題なのか。それとも、本当に体が水分を必要としているのか。

ポケットの中に手を入れると塩飴が少し残っていた。これだ。これが異常にのどが渇く原因だ。塩分を取り過ぎたのだ。水が欲しい。歩きながら足元に生えている草の葉をちぎっては口に入れた。みずみずしい葉を見つけると、ちぎって口いっぱいにほお張った。昔、学生時代に校内マラソン大会で道端の草の葉をちぎっては口に入れたことを思い出した。

そうだ、ザックの中に汗で濡れたタオルがある。ザックから取り出して、口に含んだ。そして、チューチューと吸った。実にうまい。なんてうまいのか。タオルをしゃぶりつくすと、少しだけだが渇きが癒された。少し歩くとまた、のどが渇く。水はまだあるぞ。濡れた着替えがある。ザックから取出し、シャツをしゃぶった。シャツをしゃぶりながら下山を続けた。途中で人に出会った。シャツを口にくわえている私を見て、おかしなやつだと思ったに違いない。

沢の音が聞こえてきた。もうすぐだ。もうすぐ水が飲める。走るように下った。ようやく、沢に出た。ザックを放り投げて、流れに顔をつけてごくごく飲んだ。しばらく顔を上げずにごくごく飲んだ。1リットル以上は飲んだかと思う。

ようやく落ち着いて、ゆっくりとお湯を沸かしコーヒーを入れて飲んだ。そして、ゆっくりと西丹沢自然教室まで歩いた。また来よう。次回は塩飴と水ではなく、スポーツドリンクにしよう。夕日が山の端に沈む。沢のそこかしこでカジカガエルが鳴いている。美しい鳴き声が山に響き渡る。

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