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第49回 紅葉がきれいになる条件

第6回 「涸沢の紅葉を追って」で、北アルプスの涸沢の紅葉が日本一きれいであることを書いた。今回は、涸沢に限らず、そもそも紅葉がきれいになる条件について書いてみようと思う。

紅葉がきれいになる条件は基本的に温度差と日光と湿度が必要だそうだ。私は専門家ではないので紅葉のメカニズムについてはよく分からないが、いろいろな人の意見や私の経験を基に書いてみたい。

第1の条件としては、何と言っても温度差が大きいことである。つまり、急激に温度が下がることによって、きれいに色づくのだ。つまり、(1)標高が高い山ほど昼と夜の温度差が大きい。(2)海に近いところよりも、内陸部の方が昼と夜の温度差が大きい。(3)平野部よりも盆地の方が昼と夜の温度差が大きい。(4)夏が冷夏の年よりも猛暑の年の方が夏と秋との温度差が大きい。

第2の条件としては、日光が十分にあることだ。日光がないと光合成ができない。すると、アントシアニンという物質ができないそうだ。そして、アントシアニンができないと紅葉しないそうだ。実際に日当たりの良いところはきれいに紅葉するが悪いところではあまりきれいにならない。

第3の条件としては、湿度が適度にあることだ。温度差と日光があっても、湿度が適度になければきれいにはならないそうだ。一般に、山間部は平野部より比較的雨が多いだけでなく、ガス(霧)が良くかかる。よって、通常、山間部では湿度はある。しかし、平野部では雨が少ないと、きれいにはならない。

第4の条件としては、台風の襲来が少ないことだ。台風は塩を含んでいるので、葉が枯れてしまうからだ。

第5の条件としては、紅葉する前に大雪が降らないことだ。大雪が降れば葉は一晩で全滅してしまう。

第6の条件としては、そもそも紅葉する木々が多いことだ。赤く染まるモミジやナナカマドなど、黄色く染まるダケカンバやシラカンバ(白樺)などがなければ話にならない。ウルシや柿の葉も赤くなるし、銀杏の黄色もきれいだ。

第7の条件としては、やはり周囲に絵になるような景色が欲しい。いくら、紅葉がきれいだと言っても、周囲の景色がきれいでなければ、紅葉も引き立たない。

以上の条件を考慮すると、きれいな紅葉に出会うのは容易ではない。条件がよくても、遠くまで行かなければならなかったり、自分の足で山に登らなければならなかったりする。多くの人はできるだけ近場で、しかも交通の便の良い所に行く。そのため、多くの観光地では人集めのためにモミジをたくさん植える。たとえば、箱根や高尾山ではモミジがたくさん植えられている。

しかし、こういうところは非常に混む。特に箱根は休日や土日はもちろんであるが、平日でも非常に混んでいる。バスや車で出かけると、通常、1時間程度で行ける距離が5時間以上かかったりする。 とにかく、紅葉シーズンの箱根の混み具合はハンパではないので、箱根登山鉄道やバスまたは車で行くのは止めた方がいい。湯本では駅のホームへの入場制限を行うので、小田原や新宿方面から電車で行った場合、湯本ではドアが開かずホームに降りることができない。したがって、電車も動かなくなってしまう。

箱根の紅葉をどうしても見たい人は、大雄山線か、もしくは御殿場線を利用して自分の足で山に登るしかない。たとえば、道了尊最乗寺から明星ヶ岳に登って、金時まで歩く。帰りは地蔵堂に下るか、足柄駅に下る。地蔵堂から金時に登って足柄駅に下ってもよい。そのほかにもコースはいろいろ考えられる。

ところで、寺院では昔からモミジやイチョウの木を植える。寺とモミジやイチョウには何か関係があるに違いない。単に、5重の塔や庭の苔などとモミジやイチョウとがマッチするからだけではないだろう。日本人は平安時代から紅葉を楽しむ習慣があったというから、おそらく、奈良時代から平安時代にかけて盛んになった仏教と紅葉狩りとが結びついたものと思われる。京都は盆地だから温度差が大きいので、モミジやイチョウがきれいに色づく。そのため、京都の寺では人集めにモミジやイチョウをたくさん植えたのだろう。その一方で、鎌倉は海に近いために温度差は大きくない。また、たとえ台風が来なくても潮風で葉が枯れてしまい、紅葉がきれいにはならない。

私は基本的に人が混む観光地やハイキングコースはめったに行かない。私が行く近場で紅葉がきれいで、しかも人があまり来ない場所を、私の山歩きのホームグランドである、丹沢地域で紹介する。まず、岳の台コースがよい。また、地図には書かれていないが、菩提峠から二の塔まで、日本武尊が通ったとされている旧登山道にはモミジが多い。よって、ヤビツ峠から岳の台コースを歩いて菩提峠に下りそこから二の塔まで歩くのが都合がよい。また、西丹沢と裏丹沢も比較的モミジが多い。

最後に、自宅の庭にモミジの木がある人のために、きれいに紅葉させる方法を紹介する。毎日夕方に水をかけてやるのである。理由はお分かりだろう。温度を下げ、湿度を保つためである。それと、台風や潮風で葉についてしまった塩を落とすためでもある。一日一回だけ夕方に水をかけるのである。一日に何度もかけるとかえって逆効果となる。その理由もお分かりだろう。温度差が小さくなってしまうからである。また、水をかけるのは夕方でなければならない。その理由も昼と夜の温度差を大きくするためである。

盆栽でモミジの木を育てている人たちがいる。この人たちも夕方に水をかけている。ある人が温度をより下げようとして、氷水を霧吹きで毎日かけたところ葉が枯れてしまったという。何事もやり過ぎはいけない。

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