次ページ  目次

経営相談どっと混む

第47回 梅雨時のハイキングの勧め

第33回で「梅雨時の北アルプス山行の勧め」を書きました。しかし、北アルプスに行くには日程が取れないし、体力的にもちょっとムリという人たちのために、梅雨時のハイキングについて書いてみようと思います。実は、ハイキング、つまり低山を歩くのに最もよい季節は梅雨時なのです。初心者は、ハイキングに最もよい季節は春と秋だと思っています。しかし、実はそうではない。春も秋もハイキングにはあまりよくない季節なのです。

第1に、春と秋は天気が変わりやすいのです。低気圧が次から次とやって来ます。春には恐ろしい二つ球低気圧がやって来るし、秋には台風が来ます。それに、気温の変化も激しいのです。一日で、15度~20度ぐらい変化することもあります。気温の変化が激しいというのは体にとって最も危険なのです。初心者は体温調節があまり上手ではないので、体調を崩しやすくなります。低体温症にかかってしまう場合もあります。

第2に、春と秋は天気が変わりやすいので、急に強い風が吹いてきたり、急に激しい雨が降ってきたりします。すばやく対応できないと、風でよろけてバランスを崩し転落したり、雨でびしょぬれになって体を冷やしたりします。このため、普段から訓練をしておく必要があります。歩いている途中で、横からちょっと押されてもよろけないようにし、雨具は10秒以内にザックから取り出し着られるようにしておかなければいけません。

第3に、春や秋の天気は予報しにくいのです。つまり、天気予報が当たらないのです。ですから、春や秋の天気予報は当てにできません。そもそも山の天気予報はテレビやラジオでは行っていません。平地での天気予報だけです。山の天気予報は自分でしなければならないのです。

第4に、春は雪解けで山道は泥んこになります。シルクロードならぬ、汁粉ロードなどという人もいます。そのため、靴は泥だらけになるし、滑りやすいので、転んで尻もちをつくと尻も泥だらけになります。水分をたくさん含んだ泥ですから、パンツまでびっしょり濡れてしまいます。山の中ではほかの人も同じなのであまり気にならないのですが、帰りの電車ではみっともないし、人の迷惑にもなります。当然、座席に座ることもできません。

これらに比較して、梅雨時はどうでしょう。梅雨ですから雨は降ります。しかし、梅雨前線の動きは緩やかなので、あまり変化しません。したがって、天気予報はよく当たります。ですから、天気予報を見て晴れ間を狙って行けば問題ありません。

五月晴れは5月の晴れのことだと思っている人が多いようですが、梅雨時の晴れ間のことを五月晴れと言うそうです。5月の晴れだけを五月晴れと言うのではないそうです。6月でも7月でも梅雨時の晴れ間は五月晴れだそうです。私も最近知りました。確かに辞書にはそう書いてあります。この五月晴れにハイキングに行くのです。このときが一年で最もハイキングによい季節なのです。

梅雨時の晴れ間は寒くなく暑くなく、ちょうど良いのです。平地で25度~30度あっても1000メートルの山では20度~25度ですから。それに、そよ風が気持ちいいのです。そのうえ、木々の緑が美しいのです。蓮華ツツジやシロヤシオツツジなどツツジの花盛りなのです。木の芽や花の蜜を狙って小鳥がたくさん来るので、小鳥の鳴き声もたくさん聴こえるのです。それに、なんと言っても山が静かなのです。人があまりいないからです。山を独り占めできるのです。こんなよいときに、梅雨時だから山へは行かないなんてもったいないです。ベテランは好んで梅雨時に山へ行くのです。

もし雨が降っても、天気予報どおりですので、心の準備もできています。むしろ雨を楽しむこともできます。雨に濡れた木々の緑や花を見ながら静かな山道を歩くのは乙なものです。山を歩いているときに、ときおり、どこからともなくいい香りがするときがあります。その源をたどってみると木の香りだったり、花の香りだったりします。

かつて、プロ用カメラのハッセルブラッドを持って、梅雨時に花の写真を撮りによく山へ行きました。梅雨時は花の写真を撮るのに最もいい季節だからです。なぜかと言うと、雨で花がしっとりと濡れてとても美しくなるし、風があまり強く吹かないので花が揺れず、撮りやすいからです。雨上がりに薄日が射した時に花の写真を撮るといつもよりきれいに撮れます。レフ板も要りません。ハッセルブラッドはファインダーの大きさがフィルムと同じ6cm×6cmで大きく、見たままの状態で写りますし、上からファインダーをのぞくようにできているので非常に見やすく、花の写真を撮るにはうってつけのカメラなのです。デジカメでこういうカメラがあればいいのですが、今のところありません。

梅雨時の山には、ツツジの他にウツギ、野バラ、ヤマボウシ、ショウマ、ホタルブクロ、山百合、オダマキ、イカリソウなどが咲いています。これらはよく見かける花ですが、他にもたくさんあると思います。私の好きなシモツケソウが咲き始めているのを見つけると、思わずシャッターを切ってしまいます。シモツケソウは夏の花で群生して咲きますが、梅雨時に1、2輪咲いているのもいいものです。シモツケソウを見ると白飯の上にデンブを広げた弁当を思い出してしまいます。

野バラはバラの原種だそうですが、庭に咲いているいろいろなバラよりも、私は野バラの方が好きです。野性児ですから。育てられたのではなく、自分の力で咲いたのですから。ホタルブクロや山百合は庭でも咲いているのを見かけますが、やはり野山に咲いている方がいいです。様になっています。ホタルブクロはやはり形がいいです。子供のころに実際、蛍をフクロの中に入れてみたことがあります。夜になると蛍の光が淡いピンク色になってとてもきれいでした。

山百合は香りが強いので、近くで咲いているとすぐにそれと分かります。実は、神奈川県の県花で、子供のころは自宅近くの山にたくさん群生していました。最近は、採られてしまい、少なくなってしまいました。そういう私も、子供のころ、冬にユリ根を掘って来て、庭に植えて、毎年花を咲かせました。年を追うごとに花の数が増え、一株で97個の花が咲いたことがあります。おそらくこれは日本一でしょう。父が来年は100個にしようと肥料を入れたためか、翌年は枯れてしまいました。野山に咲く花を庭に植える場合には肥料は必要ないのです。庭は野山よりも土が軟らかいし、スイカの種やみかんの皮などを捨てたりしているので野山よりも栄養があるのですから。

オダマキは糸巻きが語源ですが、山でオダマキが咲いているのを見ると、静御前のことを思い出します。静御前が義経を想う気持ちを舞を踊りながら詠ったということです。「しずやしず、しずのオダマキ繰り返し、昔を今になすよしもがな」と。愛する人を想う静御前のせつない気持ちがよくわかります。

皆さん、梅雨時にハイキングに行きましょう。梅雨が明けると、暑くて、暑くて、とても低山ハイキングなんて行けません。それでも行くと、水をカバみたいにガバガバと飲んでしまいますし、頭はくらくらするし、汗でシャツはもちろんパンツもズボンもびしょ濡れになるし、苦しくて気持ち悪い思いをするだけです。熱中症にかかったら目も当てられません。

Ⓒ 経営相談どっと混む

次ページ  目次