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第37回 冬の低山歩きについて

冬山は寒いし危険だから行かない、と言う人がいる。だが、冬山の方が好きと言う人もいる。その理由は、荷物が他のシーズンより軽い、汗をあまりかかない、雪で道が歩きやすくなる、太平洋側では天気が良い日が続く、遠くの景色までよく見える、などである。

冬が寒いのはあたりまえである。寒ければ防寒着を着ればよい。危険なのは夏山でも同じである。冬山だから危険だということはない。夏山でも冬山でも無理をすれば危険なのである。技術と経験と体力を考えて自分に合った山へ行くことである。しかも、山歩きの危険度は交通事故の危険度よりもはるかに低い。なぜなら、山歩きは危険な個所では慎重にゆっくり進むことができるが、車では危険を察知してブレーキをかけても間に合わない場合がある。そのうえ、他の車にぶつけられることもある。山歩きでは、何事も自分次第であり、遭難しても自業自得であり、自己責任なのである。これが山のルールである。

これまで何度も書いているが、冬の荷物が軽くなるのは、飲み水の量が少なくて済むからである。飲み水は春・秋の日帰りハイキングでは、通常、お湯0.5リットルに水2リットル程度で、夏は水3リットル(3キロ)程度だが、冬ではお湯0.5リットルに水1リットルあれば充分である。これは、日帰りハイキングで、10キロ程度の荷物を春夏秋冬いつでも背負っている私の場合なので個人差はあると思う。真夏の低山では水を3リットル持って行っても足りない場合もある。逆に、冬に必要なのが軽アイゼンと防寒着だが、基本装備にこれらを追加しても重量は冬の方が軽い。軽アイゼンは6本爪で300g程度であるし、防寒着は軽いので重量にあまり影響はないからである。

冬に汗をあまりかかないのは当然であるが、それだけ寒いので、保温性の高い防寒具が必要である。かといって、汗をあまりかいてはいけない。冬は汗をできるだけかかないようにしなければいけない。なぜなら、汗をかくと体を冷やすからである。また、他のシーズンのように簡単には下着の着替えもできないからである。よって、着たり脱いだりこまめに温度調節する。そこで温度調節しやすい衣類を着る。たとえば、頭からかぶるセーターなどの衣類はよくない。前開きの方が温度調節しやすい。風のない天気の良い日などは雪の照り返しで夏のように暑くなるので低山では冬でも下着1枚で歩くこともある。

最近では、良い下着がある。化学繊維のもので吸湿速乾性があり、しかも汗で発熱したり繊維自体に保温性を持たせた下着がある。通常、春、夏、秋は薄手のものを使い、冬は中厚手または厚手のものを使う。綿は吸湿性はあるが速乾性がないので山歩きには絶対に使えない。夏でも体を冷やしてしまう。昔から保温性が高いとされている羊毛は速乾性がないので、汗をかいて濡れると保温性も失われてしまう。天然繊維はとにかく下着には使えない。ただし、スリーシーズンなら化学繊維に綿を加えて肌触りを良くした綿混や保温性を高めるため羊毛を加えた毛混が使える。また、最近流行しているメリノウールは繊維が細かいため肌触りが良いのに加えて、生地が薄いので比較的早く乾き、冬山でも下着として使える。しかし、ウールはやはり中衣として使った方が良いと思う。私は、吸湿速乾性のある化学繊維の下着の上に長袖のウールのカッターシャツを着る。

天然繊維は繊維自体が吸湿するが、化学繊維は全く吸湿しない。化学繊維の吸湿・速乾性は毛管現象によるものである。化学繊維にはいろいろあるが、代表的なアクリルとポリエステルについて言えば、ポリエステルの方がアクリルよりも吸湿・速乾性が良い。しかし、ポリエステルは汗のにおいが残るし、あまり丈夫ではない。よって、アクリルとポリエステルとを混ぜた素材が多い。さらに発熱素材エクスや伸びる素材ポリウレタンを加えているものがある。また、最近では保温性を高めるため中空素材も使われている。ちなみに、ナイロンやレーヨンは丈夫だが吸湿・速乾性はないので山では使えない。なお、化学繊維は熱に弱いので、コンロやストーブで乾かしてはいけない。ただし、山小屋の乾燥室を利用するのであれば問題ない。ストーブから遠いところで一晩かけてゆっくり乾かすようになっているから。ところで、山で下着を乾かすのは基本的に着干しである。つまり、自分の体温で乾かす。この技術がないと長期のテント山行はできない。

次に、雪で道が歩きやすくなるというのは、雪が降ると石ころや木の根などが雪に埋まってしまうので、道が平らになるためである。凍った道もアイゼンを使えば滑らないので歩きやすくなる。雨が降った後で凍った場合もアイゼンを使用する。アイゼンは低山であれば4本爪あるいは6本爪の軽アイゼンで良い。なまじ、低山に本格的なアイゼンを持って行くと重いし、着脱が面倒なので使いづらい。なお、アイゼンを靴に取りつけるときにはしっかりと取り付けないと歩いている途中で外れてしまう。よって、あらかじめ着脱の練習をしておく。ちなみに、靴が冬山でも使える登山靴であればセミワンタッチ、あるいはワンタッチアイゼンが使用できるので着脱は簡単であるし、途中で外れることはめったにない。

年末に丹沢の表尾根を歩いた。雪をかぶった富士山がくっきりと見えたのはもちろんだが、東京スカイツリーも良く見えた。冬は遠くの景色が良く見えるので、景色を見たいのであれば冬に山歩きすると良い。小さな双眼鏡を持って行くと、遠くの景色をよりいっそう楽しめる。また、望遠レンズ付きのカメラを持って行くと普段撮れない写真が撮れる。冬には木の葉が落ちてしまっているので、鳥やシカや猿などの動物もよく見える。また、冬山の夜は星が特にきれいである。

夏山と冬山の違いの一つに日の長さがある。夏山では夕方6時を過ぎても明るいが、冬山では4時を過ぎると薄暗くなる。山では街よりも早く日が暮れる。なぜなら、通常、下山途中で谷に入るからである。冬山初心者が陥りやすいのはヘッドランプを持って行かないで、下山途中で暗くなってしまうことである。日帰りだからヘッドランプは必要ないと思っている。そんなことだから、当然、ビバーク(不時露営)の準備もしていない。冬山の夜は寒いし、下着の着替えを持たずに行くと汗が冷えて低体温症になり、死ぬこともある。よって、冬山では必ずヘッドランプと下着の着替えだけは最低限持って行かなくてはいけない。準備をしっかりして自分の技術と体力に合った山へ行けば冬山は危険ではなく、むしろ快適なのだ。

ところで、最近のLEDランプは非常に明るい。丹沢の帰り、ヤビツ峠から蓑毛までLEDランプを付けて歩いた。単3アルカリ電池を4本使った従来のヘッドランプより球が一個のLEDランプの方がはるかに明るかった。LEDランプは明るいだけでなく、コンパクトで軽いし、電池も長持ちする。もう、従来のアルカリ電池のヘッドランプや懐中電灯は使えない。

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