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第35回 道間違い・道迷いを防ぐ方法

第14回で「確実に遭難する方法」について書いたが、遭難する原因の一つに道まちがい・道迷いがある。そこで、これらを防ぐ方法と、もし道まちがい・道迷いをしてしまった時にどうしたらよいかについて書くことにする。

最近は山歩きをする若い女性が増えている。山ガールと呼ばれている。集団山行ではなく、一人であるいは数人でという場合が多いようである。昔も若い女性が一人であるいは数人で山歩きをしているのを見かけたが、最近ほど多くはなかった。その理由は山で男に襲われる恐れがあったからである。ところが、最近では草食男子が増え、それとは対照的に肉食女子が増えたためか、あるいはむしろ女性の方が男性を襲うようになったためかもしれない。昔も山には肉食女子がいた。山でイケメンを見かけると、「お兄さん、休んでいかないの?」などと声をかけていた。

最近ではこちらから声をかけたくなるような女性が大勢山歩きをしている。山歩きのファッションがかわいいとかで山歩きをするようになったのか、たくましい男を探すために山歩きをするようになったのか、それとも本当に山歩きが好きになったのかはわからない。確かに昔は、スカートで山歩きをする女性はいなかった。それに、最近では都会でたくましい男を探すのが難しいのかもしれない。あるいはまた、本当に山歩きのすばらしさに気付いてしまったのかもしれない。

いずれにしても若い女性が山歩きをするのは、美容と健康に良いので結構なことである。無理なダイエットをしたり、顔を塗りたくったりするよりもはるかに良い。大自然の中で汗をかいて、すばらしい景色を眺めたり、高山植物のかわいさに目を丸くしたり、小鳥のさえずりに耳を傾けたりする方が美容と健康に良いに決まっている。

若い女性が増えた理由は、おそらくテレビで富士登山や高尾山ハイキングの様子を何度も放映したためだろう。山歩きを始めたばかりの若い女性は、よく、「私、方向音痴なの~」と言う。また、「女は地図が読めないのよ~」とほざく。『女は地図が読めない』という本がある。男と女とは脳の働きが異なっているからだと書いてある。しかし、それはウソである。女は地図が読めないのではなく、読もうとしないのである。読もうとしないから読めないのである。女でも読もうとすれば読めるし、山に一人で行くこともできる。実は、男も地図を読もうとしない。だから地図が読めない。その証拠に女も男も案内人(ガイド)がいるときには地図を持って来ない。たとえ地図を持って来たとしても、読もうとしない。だから道をまちがえる。

ところで、道を間違えるということと、道に迷うということとはまったく別のことである。先日、NHKのテレビで、山で道に迷わないためにどうすればよいかについて放映していた。ところが、道を間違えることと道に迷うこととを混同していた。従って、対策が曖昧になってしまっていた。道を間違えることは、山歩きではよくあることである。何度も山歩きをしたことがある人なら経験があるはずだ。道を間違えても正しい道に戻れれば問題はない。しかし、道に迷うということは正しい道に戻れなくなった状態であるから、遭難の危険がある。

そこで、まず、第一に、道を間違えないようにするにはどうすればよいかについて、第二に、道を間違えた場合に正しい道に戻れるようにするにはどうすればよいかについて、第三に、正しい道に戻れなくなった場合に、すなわち、道に迷った時にどうすればよいかについて書くことにする。

道を間違えないようにする方法の一つは地図を見ながら、つまり、現在位置の確認をしながら歩くことである。当然である。しかし、多くの初心者は地図を見なくても人に案内してもらえばいいと思っている。よくテレビ番組でタレントが山歩きするときに案内人(ガイド)に案内してもらうことがある。その時に案内されるタレントは地図を持っていない。単に案内人について行くだけである。だからテレビを見た人は案内人についていけば山歩きができると思ってしまう。こういう番組が道間違い・道迷いを助長しているのだ。

もし、案内人が道を間違えた場合にはどうするか。そんなことはありえないと思う人は過去の遭難を調べてみればよい。ベテランでも道を間違え、道に迷い、そして遭難するのだ。遭難したくなければ常に自分で地図を見て現在位置を確認しながら歩くようにしなければいけない。そうすれば、道間違いをしないで山歩きができる。

道間違いしないために最も重要なことは、人を当てにしないこと、人任せにしないことである。実は、集団山行やグループ山行に参加する人のほとんどが人を当てにしている。いざとなったら人に助けてもらおうと思っている。そう思っている人たちばかりが参加しているのだ。そう思っているからこそ一人ではなくグループや集団で山へ行くのだ。逆に、いざとなったら人を助けようと思って参加する人は誰もいない。だから、いざとなったら誰も助けてはくれない。

リーダーを当てにしてはいけない。なぜなら、リーダーといってもベテランとは限らないからである。リーダーと称する人たちの多くは、単に道を知っている道案内人なのである。本当に山を知っているベテランはリーダーになろうとはしない。なぜなら、ベテランはリーダーの責任の重さを知っているからだ。たとえば、メンバーがつまづいて滑落して大怪我したり、死んでしまった場合、リーダーがその責任を問われることがある。「自分には責任はない、メンバーがつまづいたのが原因だ」と言ってもムダだ。リーダーは法的責任を問われることになる。

だから、ベテランは山の技術・経験がないような人を連れて行くよりも、一人で行った方が安全・安心で気楽に山を歩ける。よって、通常、ベテランは一人で行くか、技術・経験がある山仲間と行くか、あるいはメンバーとして行くかである。もちろん、仕事で案内人(ガイド)として山へ行く場合は別である。仕事だから仕方ない。

さて、道を間違えないようにするには、既に書いたように、人を当てにしないで、必ず、自分で地図を見て現在位置を確認しながら歩くことである。特に、分岐点ではしっかりと確認する。

しかし、実際には、分岐点に道標がなかったり、道標があっても文字が消えていてよくわからなかったりする。また、地図上では分岐点があっても土砂崩れなどで道が消えてしまっていて、分岐点がなくなっていたり、分岐点がどこかわからなくなっている場合もある。さらに、地図上には分岐点がなくても実際には分岐点がある場合もある。それは、地図には載っていない新しい道ができていたり、登山道ではなく山仕事のための道であったり、獣道であったりするからだ。このような場合には、道の状態と周囲の景色と地形などを地図と磁石で見比べて正しい道を見定める必要がある。

山仕事をする人たちは地下足袋を履くので、もし地下足袋の足跡がついていれば山仕事の道かもしれない。あるいは、沢登りをする人たちが地下足袋を履くことがあるので沢登りの道かもしれない。 獣道と登山道との見分け方は、まず、道が下草などで覆われていてトンネルのようになっている場合には獣道の可能性がある。獣は人間のように2本足で立っては歩かないからである。また、道が車のわだちのように一定の幅で2本ついていて中央部分が多少盛り上がって草が生えているような場合には獣道である。なぜなら、獣は常に同じところを歩くからである。人間のように真ん中を歩いたり端っこを歩いたりしない。また、獣道には獣の足跡が付いていたり、毛や糞が落ちていたり、獣のにおいがする場合が多い。しかし、それでも獣道と登山道とを間違えることがある。多くの獣が利用している場合は獣道が重なっているからである。

また、分岐点では必ず後ろを振り返って道の状態(道幅や石ころの有無など)はもちろん、周囲の景色(木の枝ぶりや岩の形など)を良く確認しておくことである。間違いやすいところでは、何らかの目印をつけておく。木の枝を結んだり、赤い紐を木の枝に結びつけたりする。あるいはデジカメで分岐点の道の状態や周囲の景色を振り返って撮っておく。そうすれば画像を確認しながら来た道を戻ることができる。デジカメの使い方としてお勧めである。

では次に、道を間違えてしまった場合にどうすればよいかであるが、まず、道を間違えたことをできるだけ早く気付く必要がある。そのためには、やはり、現在位置を常に確認しながら歩くことである。そして、道を間違えたことに気付いた時には改めてその場所で現在位置の確認をする。そして、どの辺で間違えたのかを地図上で推定し、必ず来た道を戻ることである。決して、先へ進んではいけない。当然だと思うかもしれないが、実際には先へ進んでしまう場合が多いのだ。

地図を見て現在位置の確認をした時に到着予定の場所に近い場合、あるいは戻ったら暗くなって途中でビバーク(不時露営)しなければならないような場合に、先に進んだ方がよいと判断する人は多い。ヤブ漕ぎの経験がある人はほとんどがそういう判断をする。そうでなくても、多くの人はせっかくここまで来たのに戻るなんてもったいないと考える。特に、経験不足のリーダーがそう考える。道を間違えたことをメンバーに知られたくないためにそうするリーダーもいる。しかし、これは決して行ってはいけない。どんな場合でも道を間違えたら必ず来た道を戻ることである。何時間かかろうと、途中で暗くなろうと、必ず来た道を戻ることである。

ところが実は、来た道を戻ることは容易ではない。なぜなら、どこで間違えたのかがわからないからである。わかれば間違えることなどない。これまで後ろ向きで歩いてきたわけではないので、戻ろうとしたときに来た道の周囲の景色が全く違って見える。したがって、戻っているつもりでも戻る途中でまた道を間違え、結局、道に迷うことになる。これを防ぐには、戻るときに後ろを振り返りながら歩くことだ。間違えた場所がわかれば戻ったことになるので再出発できる。

さて最後に、それでも、もと来た道に戻れなくなって道に迷ってしまった場合にどうすればよいか。山に慣れていない人や経験の浅いリーダーは早く下山しようとあせって下ってしまう。なぜなら、下に行けば道があって下山できると単純に考えるからである。また、のどが渇いて水が欲しいときに下に行けば谷に出て水が得られると思うからである。しかし、決して下ってはいけない。なぜなら、日本は雨が多いため山は尾根と谷とでできていて、谷は急勾配で崖となっているところが多いからである。よって、下ると必ず崖にぶつかり、それ以上、下ることができなくなる。また、急勾配のため滑って怪我をして動けなくなることがある。しかも谷は早く暗くなるし湿っているので体が冷える。

道に迷ったら必ず登らなければいけない。どんなにのどが渇いていても、どんなに疲れていても、登らなければいけないのである。登れば必ず尾根にでる。尾根では周囲の景色が良く見えるし、いつまでも明るい。さらに尾根には通常登山道がついている。なぜなら、登山道は本来、尾根伝いにつけれられるからだ。昔から誰でも周囲の景色が良く見えて明るい尾根伝いを歩きたいと思っていた。だから通常は尾根伝いに道ができているのである。谷に道ができている場合は谷川の水を確保するためであるとか、峠越えをするためである。これら以外の目的で谷に道を作ることはない。このことを知っていれば山の地形を見て道がどこについているかがわかるので遭難することはない。また、常に水は少なくとも1リットル余分に持って歩くことである。

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