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第26回 テント山行について

テント山行で最も重要な装備はもちろんテントです。まず、山用テントの歴史を紹介します。今から50年以上前、私が中高生のころの山用テントはすべて綿でできていました。綿は丈夫だし通気性がよく快適だからです。しかし、重いし、雨が降ると生地の中に雨が滲み込みいっそう重くなるだけでなく通気性がなくなって快適ではなくなってしまいます。山では重いというのは大きな欠点でした。その上、雪が降るとテント内の暖かさで屋根の上に降り積もった雪が解け、翌日にはテントが凍ってしまうのです。こうなるとそのテントはたたむことができず持ち運びできなくなってしまいます。このため、昔は冬山では炊事はテントの外で行い、テントの中をあまり暖かくしないようにしていました。何のためのテントかわかりません。

その後、綿のテントの欠点をなくすものとして、ナイロンが使われるようになりナイロンテントが急速に普及しました。ナイロンは綿などの天然繊維より丈夫で軽く防水効果が抜群に良かったので山では非常に重宝されました。テントだけでなく、ザイルや雨具などもナイロンに変わりました。ちなみに、ザイルはナイロンの前は麻でしたし、雨具は綿にゴム引きしたものでした。

しかし、ナイロンテントが急速に普及したため、ナイロンの欠点を知らない人たちがいろいろな事故を起こしてしまいました。ナイロンは熱に非常に弱く、また通気性が全くないのです。テントの中で炊事をして火事になってテントが燃えてしまったり、一酸化炭素中毒で死んだりしました。冬山では人の呼吸や炊事による蒸気で寝袋も衣類もすべてが濡れてしまい、それが翌朝には凍り、凍死してしまうこともありました。また、ナイロンザイルによる事故もあり、有名な小説「氷壁」の題材にもなりました。ナイロンザイルは岩とこすりあってできる熱で溶けてしまうのです。

ナイロンの欠点が問題になって、何とかこの欠点をなくそうと、ビニロンなどいろいろな化学繊維が開発されました。そして、いろいろな合成繊維の製品が作られました。これらの中で衣類やテント用の合成繊維として注目されたのがゴアテックスです。ゴアテックスは当初から夢の繊維と言われました。それは水蒸気は通すが水は通さないというものでした。つまり、防水性と通気性という相反する性質を併せ持つ繊維なのです。繊維の隙間が水の粒子より小さく水蒸気の粒子より大きいという優れものです。それで、ゴアテックスが高価であるにもかかわらずしだいに普及し、現在ではテント、雨具、防寒具、ハイキングシューズなどに使われています。ゴアテックスも当初は性能が悪く、1~2年で使えなくなってしまいましたが、しだいに改良されました。しかし、だからと言って化学繊維の性質である熱に弱いという欠点はありますから、気をつけなければいけません。現在でもテントの火災事故は起きているのですから。

次にテントの歴史で知っておく必要があるのは、テントの形状です。昔のテントは家型と屋根型の二種類が主流でした。この他に、アメリカインデアンのような三角テントもありました。屋根型は家型の腰の部分がなく屋根の部分だけのテントです。したがって、一般に、大きなテントは家型で小さなテントは屋根型でした。これらは横風に弱いという欠点がありました。それで、テントを設営する時には風の向きを考えて出入り口が風下になるように設営したのです。また、風の強い時には通気口を開けて風が通り抜けられるようにしたのです。そうしないとテントが飛ばされてしまうからです。そのため、風が強い冬山では必ずテントの周りに雪の壁を作って風を防いだのです。現在でも屋根型のツェルト(簡易テント)を張るときには注意する必要があります。

その後、ドームテントが流行し始めました。ドームテントはどの方向からの風にも強くできているからです。長いポールを二本使うので設営が面倒で最初は違和感があったのですが、何よりも風に強いという長所があったため安心して寝ることができます。その後、いろいろな工夫により設営が簡単になり、慣れれば一人で10分以内で設営できるようになりました。それで、現在ではドームテントが主流になっています。ちなみに、私はメスナーテントを使用しています。これは構造上、ポールとテント本体とが一体になっていないため、通常のドームテントよりも風に強く、しかも設営が非常に簡単で、一人で5分ぐらいで設営できます。お勧めです。

次に設営について書きます。まず、非常時以外は決められた場所(テント場:通称テン場)でテントを張ります。テン場は安全な場所にあり、通常、水はけをよくするために周囲に溝を掘ってあります。非常時にテン場以外でテントを張るときはできるだけ高台で水はけの良いところに張ります。そして、テントマットを必ず使います。これがないと地面からの冷えで夏でも冷たくて寝ることができません。寝袋は良質の羽毛を使用したものの方が暖かいですが、それだけ高価ですので、季節と標高を考えて決めてください。荷物は邪魔にならないようにテント内の周囲の縁に置きます。風でテントが飛ばされないようにするための重りにもなります。風がテントの下に入り込むとテントが浮いて飛ばされやすくなるからです。また、ペグはしっかりと固定してください。今でも風の強い日にテントが次々と飛ばされるのをときどき見かけます。

靴は入り口近くに置きますが、冬は寝る時に寝袋の中に入れて凍らないようにします。炊事ですがコンロは暖炉でもありますのでテントの中央に置き、みんなで囲むようにして炊事をします。しかし、冬は炊事はできるだけテントの外で行います。理由はお分かりでしょう。ナイロンテントと同じ事故が今でも起きているからです。夏山や山小屋の中では通常ガスコンロを使いますが、気温が低い冬山のテント山行ではガスが気化しにくいので火力が弱くガスコンロは使えません。ガソリンや灯油のコンロを使います。よって、火災を起こしやすいのです。冬山では水はザックの中で凍ってしまい、炊事用の水は雪を溶かして使うので火力が必要なのです。

最後に、テント山行で意外と重宝するのをいくつか紹介します。まず、フライシートまたはテントカバーです。テントの上にシートを張るものがフライシート、テントをすっぽりと覆うのがテントカバーです。夏はフライシート、冬は暖房効果のあるテントカバーを使います。雨や雪の日にこれらを使うとテントが濡れず、また、テントの中が蒸れないので快適に過ごせます。次にヒーターです。冬ではテントの中でも寒いのでヒーターを使うと一晩中暖かく過ごせます。ヒーターといってもコンロの上に乗せる小さなもので軽いです。その割には効果がありますから持っていくと快適だと思います。次に、白金カイロです。最近は使い捨てカイロが主流ですが、白金カイロの方が暖かくしかも燃料を補給すれば何日でも使えますので、数日の山行では使い捨てカイロより軽くなります。燃料は灯油ですので灯油コンロと共通に使えます。夏山で持っていかなくてはならないのは蚊取り線香です。もし、蚊取り線香を持っていくのを忘れたらヨモギを燃やしてください。効果があります。

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