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第25回 食事について

自炊する場合、山の食事の定番といえば、昔は乾燥米に缶詰、今は即席メンであろう。即席メンといってもいろいろな種類があって、選ぶのに迷うくらいである。しかし、私は即席メンは持って行かない。軽いので背負って歩くには都合が良いのはよくわかるが、味気ないしあまり旨いとは言えない。一方、レトルトパックは旨いけれども重いので敬遠しがちである。しかし、物事は考えようである。レトルトパックが重い原因は水分が多いからである。では、水分は山では必要ないのであろうか。もちろん水分ほど必要なものはない。

それなら、レトルトパックの食料から水分を摂っても、水筒の水から摂っても同じことではないか。いずれにしても、水分は背負って歩かなければならないのである。したがって、水分をたっぷり含んだ美味しいものを食べた方が良いことになる。しかし、それでも調理が大変だという人がいる。即席メンならお湯を沸かして入れるだけでよいが、レトルトパックでは暖めるのに時間がかかると言う。しかし、山でそう急ぐこともなかろう。なんなら、レトルトパックから中身を取り出して直接暖めれば良いではないか。

レトルトパックと言っても、スーパーやコンビニなどで買ったものではなく、自分で調理したものをパックすればよいのである。自宅で食べたものの残り物でもかまわない。とにかく、ジッパー付きのパックに詰めて山で暖めれば良いだけである。ジッパーが開いてしまわないように、ジッパーに加えて私はホチキスでも止めている。ご飯はもちろん、野菜炒めなどのおかずでも、鍋焼きうどんでも、スパゲッティでも、なんでもパックに詰めて、それを鍋で暖めれば美味しく食べられるのである。試しに自宅でやってみればよい。自宅では残りものをパックに詰めて冷凍庫に入れて凍らせておいて、必要な時に取り出して暖めるだけで美味しく食べられる。山でも同じである。冷凍庫から取り出してザックに詰め、山で暖めるだけのことである。つまり、自宅で食べるのと山で食べるのとが同じなのである。

レトルトパックというのは優れもので、酸素が入らないようにぴったりとパックして腐らないようにしたものである。そもそも、缶詰が腐らないのは、酸素を遮断するからである。それなら、自宅で作るパックでも同じである。ただし、完全に酸素を遮断しなければいけない。そのコツは水分を多く含ませて、空気が入らないようにパックすることである。しかし、問題がある。パックする時にすでに細菌が含まれていたのではダメである。したがって、調理する時に高温(70度以上)で調理し、熱いうちにパックしなければいけない。最も良い方法は圧力釜で短時間で調理して、出来上がってから釜の圧力を抜いたらすぐにパックするのである。短時間で調理するので身崩れしないし、味が滲みてうまいのである。これで、おでんやシチューなどを作って山で暖めて食べれば最高である。

肉や魚を生で持っていくのは腐ってしまうのでできないが、調理したり、味噌漬けにしたり、塩漬けにしたり、干物にしたりすれば腐りにくい。春・秋・冬の一泊程度の山行なら、出かけるときに、肉を塩コショウしておけば、その日の夕食なら焼き肉が山で食べられる。肉は味噌漬けにしておけば3日ぐらいは大丈夫である。私は真夏に山で時々肉うどんを作って食べるが、その肉は朝出かけるときに味噌を塗っておくのである。また、魚は塩水につけてからパックして持って行けば、その日の夕食に塩焼きが食べられる。山では塩分が不足しがちなので、多少塩辛い方が良いし旨い。いずれもレトルトパックに入れて持って行けば腐りにくくなる。

新鮮な野菜は山に持っていけないと思っている人が多いがそんなことはない。腐りにくい野菜としては、玉ねぎとジャガイモが知られているが、そのほかに、ナス、ピーマン、ごぼう、にんじんなども比較的腐りにくい。山は気温が低いので大丈夫なのである。早くダメになってしまうのが葉もの野菜であるが、これは水分が不足するのが主な原因である。したがって、少し水分を含ませるか、下ゆでしてからパックすればよい。

昔、北アルプスの徳本峠で小屋の小松さんからナスの長期保存法について聞かれたことがある。夏はナスが他の野菜に比べて日持ちが悪いので困っているとのことだった。小松さんの話によると、玉ねぎとジャガイモを除き、野菜はぬらした新聞紙にくるんで小屋の地下室に保存しているが、ナスは数日で傷んでしまうということだった。ナスは水分を多く含んでいるため、水の中に入れておいた方が長持ちするのではないかと言ったら、そうしてみると言われた。その後、1ヶ月ぐらいしてから、自宅に感謝のハガキが来た。どうやら、私の提案がよかったらしい。実は私が子供の頃、私の家は農家だった。キュウリ、トマト、ナス、葉物野菜などは水の中に入れておけば長持ちするのである。花を花瓶に入れておくのと同じである。

槍の穂先(山頂)で天ぷらを揚げたことがある。大勢の人に取り囲まれて、「美味しそう」、「旨そう」の連呼に、「誰にもやらない!」と言いながら食べたことがある。誰かにあげたら、みんなにあげなければならない。食べられないのをひがんで、「ここは気圧が低いから旨くできないはずだ」などと言う人がいたが、そんなことはない。実に旨かった。理由は簡単である。自宅で一度揚げて、それをレトルトパックに入れて持って行ったからである。現在、山小屋の食事は昔と比べると格段に旨くなった。調理済みの冷凍食品を使っているためである。それと同じで、一度調理しておけば、山ではどれも旨く食べられるのである。レトルトパックした冷凍食品は山では非常に便利である。調理してから冷凍してあるので、解けても簡単には腐らない。したがって、自宅で調理してレトルトパックし冷凍庫に入れておき、山へ行くときに持って行けばよい。

日帰りハイキングでは、非常食や行動食以外はお昼の弁当だけを持っていけば良いのだから、難しく考える必要はない。腐りやすい時期は海苔巻きや稲荷寿司などの酢が入ったものを持って行き、そのほかの季節には何を持っていっても良い。真冬は冷たくなってしまうので、使い捨てカイロで暖めるようにすると良い。もちろん、コンロを持っていって、暖かいものを食べるのが最も良い。いずれにしても、即席メンなどの味気ないものは私は持って行かない。

最後に非常食や行動食について書くことにする。非常食や行動食の条件は、調理が要らない、食べやすい、腐りにくい、栄養のバランスが良い、栄養が吸収されやすい、疲れが取れる、軽いなどである。昔から使われているチョコレート、チーズ、ビーフジャーキー、サラミソーセージ、乾パン、氷砂糖なども良いが、これらは腹持ちが悪く、満腹感が得られないという欠点がある。そこで、私はフランスパンにピーナツバターをつけるとか、甘食、バウムクーヘン、乾燥芋、干し柿、大福などを持って行く。いずれも私が好きなもので食べた気がするし、条件にほぼ合致している。探せはもっといろいろある。

フランスパンを除き、多少水分が含まれているので重いのが難点であるが、非常食や行動食にこそ水分は必要なのである。なぜなら、水無しでそのまま食べられるから。また、山で食べられる山菜を見つけたらマヨネーズをつけて食べる。マヨネーズはそのまま舐めても旨い。酢が入っているので腐らないし、油も入っているので油いためもできる。卵も入っているので栄養のバランスはよい。マヨネーズは非常食の王様であると私は思う。それともう一つ。柑橘系の果物が欲しい。疲労回復には欠かせないからである。私は、夏はオレンジ、春と秋はみかん、冬は金柑を持っていくことにしている。疲れたときに、山で食べたらこれほど旨いものはない。甘さと酸っぱさが疲れをいっぺんに取ってくれる。また、水代わりにレモンテーを持っていくのも良い。

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