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第22回 山歩きの装備(2)靴の選び方と履き方

前回、靴の種類と特徴について書いたので今回は靴の選び方と履き方について書いてみようと思います。

50年も山歩きをしていると何度も靴選びに失敗し、無駄な買い物をした経験があります。例えば、買ってから数回使用した後でようやく足に合わないことが分かったのですが、しばらく使っていたことがあります。3万円以上するものでもったいないので使っていました。しかし、使うたびに足を傷めて結局捨てざるを得なかったのです。

人によって足の形が違うので自分の足にあった靴を選ぶのは難しいです。単に、大きさだけで選んではいけません。大きさはメーカーによっても異なるし、足の幅や甲の高さ、アーチ(土踏まず)の形など、いろいろと考慮しなければならないのです。足に合っていないと痛くて歩けなくなってしまいます。山歩き用の靴は必ず山用品の専門店で買ってください。決して量販店や靴の専門店などで買ってはいけません。また、山歩きのベテランのアドバイスを受けたとしても自分に合っているかどうかは自分にしか分からないので、結局、自分で決めるしかないのです。となると、山歩きの経験が必要ということになります。よって、山歩きに慣れないうちは靴選びに失敗するのはやむを得ないことなのです。最初に買った靴が足にぴったり合うのはまれだと思った方が良いでしょう。

昔の靴は皮製で糸で縫って作ってあったので、使っているうちに次第に足になじんできたものですが、現在の靴は硬質ゴムで靴の下部全体をがっちりと覆っているので足に合わないと痛くて使えなくなってしまいます。とは言うものの、少しでも失敗しないように、私の多くの失敗を基に靴の選び方と履き方について書いてみようと思います。まず、大きさですが、通常はどのような靴でも、靴を履いてひもを普通に締めてからつま先でトントンして足を靴の前方に持って行って、かかとと靴の間に指1本分入る程度の大きさがちょうど良い、ということになっています。山歩き用の靴ではこれを厚手の靴下を履いて行なえば良いのです。つまり、ビジネスシューズやジョギングシューズなど普段履いている靴の一回り大き目の靴で良いのです。

昔の常識では、ハイキングシューズは普段履いている靴の一回り大きな靴を、登山靴はふた回り大きな靴を使いました。例えば、私の場合、普段履いている靴のサイズは25.5cmですので、ハイキングシューズは26cm、登山靴は26.5cmでした。なぜなら、ハイキングシューズの場合は厚手の靴下を一枚履いて靴を履くのに対し、登山靴の場合は厚手の靴下を二枚、または厚手一枚と薄手一枚履いてから靴を履くからです。これは防寒とクッションのためです。土でできた低山中心に使うハイキングシューズと岩だらけの高山や厳寒期に使う登山靴とでは当然靴下の厚さや枚数が異なるからです。しかし、最近の登山靴は軽くて丈夫な上、防寒・防水に優れているので、冬山用の登山靴でも厚手の靴下を一枚履くようになりました。

サイズの次には靴の幅と甲の高さに注意してください。日本人の足は幅広だということはよく知られています。そこで、外国製の靴を買うときはこの点に気をつけなくてはいけません。というのも、ヨーロッパアルプスでスポーツ登山が始まって以来、登山靴はヨーロッパ製の方が良い靴が多いからです。昔からイタリヤやドイツ、フランスなどの登山靴が有名ですが、日本製にも良い靴があります。もっとも最近は、ヨーロッパ製でも日本人の足にあわせた靴を作っていますから選択肢はたくさんあります。ヨーロッパ製の靴は一般に幅が狭く甲高に作られていますので、サイズとの関連をよく考えて選んでください。

メーカーによってサイズも幅も高さも異なりますから、山用品の専門店ではこの点を中心にアドバイスしてくれるはずです。アドバイスできない店では買わないほうが無難です。もう一つ重要なことがあります。それはアーチ(土踏まずのカーブ)です。このアーチがないと歩くたびに靴の中で足が前後に動いてしまうので足が疲れるだけでなく土踏まずの部分が痛くて歩けなくなってしまうことがあります。また、靴ひもを強く結んでも爪先や小指の付け根が靴に当たるので、痛くて歩けなくなってしまいます。一般に、価格の安い靴はアーチがなかったりアーチをいい加減に作ってあります。アーチが足に合っていると単に足入れが良いというだけでなく、歩くのが気持ちよく楽しくなるのです。自分の足に合っている靴に一度出会うともう他の靴は使いたくなくなってしまいます。山用品の専門店で靴を履いて店の中を歩き回って、他の商品を見て回っているうちに多少なじんできますので、合っているかどうかが少し分かります。少なくとも30分以上は歩き回ってください。それでも、実際に山を歩くと合っていない場合もあります。

話が前後しますが、靴を選ぶために最も重要なのは、用途です。低山ハイキングが中心なのか、それとも高山も歩きたいのか、あるいは厳寒期の高山に挑戦するつもりなのかをよく考える必要があります。誰もが最初は低山ハイキングに使う靴を買おうと思うでしょうが、それは必ずしもよい選択とは言えません。なぜなら、同じ低山でも冬は雪と氷の山になるわけですから、冬も歩きたいのであれば高山用の登山靴(アルパインブーツ)の方が良いわけです。坂道が凍ってしまえば登り下り出来なくなってしまうのでアイゼンが必要になるからです。たとえ軽アイゼンでもアイゼンを使うのであれば高山用の登山靴(アルパインブーツ)を最初から買ったほうが良いということになります。軽アイゼンでワイヤーが付いたものは、かかとの部分にワイヤーを引掛けて固定するので着脱が簡単で外れにくいのでお勧めです。

要するに、軽登山靴(ハイキングシューズ)はスリーシーズンの低山用なのです。冬の低山も夏の高山も歩きたいというのであれば最初からオールラウンド登山靴(アルパインブーツ)をお勧めします。最近では軽登山靴、あるいはオールラウンド登山靴(アルパインブーツ)とは言ってもいろいろなバリエーションがあって明確な区別がなくなっています。金に余裕がある人はいろいろ買って使い分ければよいわけです。

ハイキングシューズの値段は当然ですが安いものから高いものまでいろいろとあります。まず、材料が異なります。最も安い靴は布製や化学繊維製で、少し高い靴は皮製です。ゴアテックスと皮との両方を使って機能的に優れていながら価格はそれほど高くないというものもあります。より高価な靴は内張りに子羊や子牛の皮を使っています。内張りに子羊や子牛の皮を使っていると非常に足入れがよく、足にフィットします。次につくりですが、いくら人によって足の形が違うとは言っても、安い靴はあまり足の形に合わせて作られていません。また、靴底が簡単に曲がってしまったり、アーチがなかったり、あってもいい加減であったりします。編み上げに関しては、短靴で網上げがないもの(ローカット)、くるぶしまで覆うもの(セミカット)、足首全体を覆うもの(ハイカット)の3種類がありますが、ローカットは避けてください。ハイキングシューズでも少なくともセミカットを使って下さい。捻挫を防ぐことができます。

さて、靴を選んだところで、次に履き方です。まず、使う前に皮製の場合は靴クリーム(保革油)を塗ってください。皮革の保護と防水のためです。紐の締め方は登りはゆるめに、下りはきつめに締めます。通常は、最初は登りですから最初はゆるめで良いのです。大事なのは下りで締めるのを忘れないことです。締めないと、足に力が入らなくなりスリップしやすくなります。下りで滑落する人が多いのは疲れと紐をしっかりと締めていないためです。また、下りで紐を締めないと足先が当たって足の爪を傷めてしまいます。

靴紐の締め方は八の字を描くようにして締めます。つまり、下から上に順に紐を締める下掛けではなく、一つ一つ上から下へと締めていく上掛けです。こうすると、順に紐を紐で上から抑えるような形になるので緩みにくくなるのです。次に、締めた後の結び方ですが、蝶結びでしっかりと結び、さらにもう一回蝶結びをするとほどけなくなります。ちなみに、余った紐を靴の足首の部分に巻きつけている人がいますが、これはいけません。靴が型崩れしてしまいます。紐が余るようなら、紐をちょうど良い長さの紐に取り替えてください。

最後に手入れの仕方ですが、山から下りたら、まず、水洗いです。ジャブジャブ洗うのではなく、泥を落とすために外側だけをタワシで水洗いします。また、靴底の溝に挟まった小石を取り除いてください。内側に泥が入って汚れた場合は、私は雑巾で拭きます。そのうえで、風通しの良い日陰で次の山行までそのまま置いておけば良いのです。決して直射日光に当てたり、ストーブなどで乾かしてはいけません。皮が痛んでしまいます。また、数回の山行に一回程度、保革油(靴クリーム)を塗ってください。毎回塗ってはいけません。塗りすぎは型崩れを起こします。なお、靴底が減って滑りやすくなったら靴底を張り替えます。良い靴ならこれでほぼ一生使えます。

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