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3-10価格設定戦略(2)

前回は価格設定の基本的なことについて解説いたしました。今回は実務的な価格設定戦略について解説いたします。

1.新商品の価格設定戦略

新商品を市場導入する場合の価格設定には大きく二つの戦略があります。上澄み吸収価格戦略と市場浸透価格戦略です。一方は高価格、他方は低価格ということで、これらは価格に関しては相反する戦略です。

(1)上澄み吸収価格戦略

新商品に高価格を設定して、新しいものが好きな富裕層をターゲットにして販売しようという戦略です。一番うまみのある部分をすくい取るということから上澄み吸収価格戦略と呼ばれます。この戦略の狙いの一つはこれまで開発にかかった費用をできるだけ早く回収してしまおうということです。新しいものが好きな富裕層というのは統計的には顧客全体の数パーセントしかおりませんが、これらの人は新しいものほど、また、価格が高いほど購入したくなるという性格なので、企業にとっては最もうれしい顧客なのです。

しかも、これらの人たちは購入した商品を自慢したがるので、口コミにより、高所得層から中所得層へと自然と広がっていくので、企業はそれに伴い価格を順に下げていけば売上が次第に増えていくことになります。これがこの戦略のもう一つの狙いです。よって、企業にとっては非常によい戦略なのです。

しかしながら、この戦略を採用するには条件があります。それは、競合他社が容易に類似商品や模倣品を開発できないことです。つまり、技術的に特に優れた商品であるとか、基本特許を取得した商品であるとかです。例えば、インテルの半導体チップなどです。

(2)市場浸透価格戦略

新商品とは言っても比較的模倣されやすい商品や多くの人が使用するような商品の場合に採用される戦略です。多くの人が使用するような商品は高価格では売れないので、低い価格を設定して、できるだけ早く大勢の人に買ってもらい、開発費用をできるだけ早く回収してしまおうという戦略です。低い価格を設定することにより、類似商品からこの新商品に切り替える顧客をできるだけ多くし、ブランドに対する愛顧心を高めて末永く使用してもらおうという戦略です。また、これにより、競合他社が模倣商品を開発・販売する前に大きな市場シェアを確保し、規模の経済や経験効果によって低コストを達成して利益を確保しようという戦略です。

2.消費者心理を活用した価格設定戦略

上の図は価格と需要量との関係を描いた需要曲線と呼ばれているものです。

(1)端数価格

端数価格と言うのは、980円とか9,800円とかのように、9や8の数字を使った価格を言います。1,000円のものを980円にすると、20円安いだけなのですが、桁が一桁違うので実際にはかなり安くなっていると感じてしまうのです。これが消費者心理です。

(2)威光価格・名声価格・プレステージ価格

威光価格、名声価格、プレステージ価格などいろいろな呼び方があります。通常、消費者は価格が高いものは価値があり、価格の低いものは価値がないという判断をします。そこで、この消費者心理を意図的に利用して価格を高く設定するのです。本来はそれほど高いものではないにもかかわらず、あえて高く設定するのです。妥当な価格に設定するとかえって売れなくなるのです。この戦略は宝石や高級時計、高級バックなど購買頻度が低く、消費者にはその価値がよく分からないような商品に利用されます。いわゆるブランド物はこの戦略を利用してブランド価値を高めたものです。

(3)慣習価格

缶入コーヒーは現在は120円になっていますが、かつては長い間100円でした。このように、一定の価格で長い間慣習的に決まってしまっている価格のことを慣習価格と言います。慣習価格の場合、価格を上げると需要量は減るのですが、価格を下げても需要量は増えないのです。したがって、こうした商品の場合、原材料が上がった場合には値上げしないで、通常、内容量を減らすのです。

(4)補完的価格・キャプティブ価格

本体とは別に消耗品や使用料が必要な商品の場合に、本体を低価格で販売し、消耗品や使用料を高くするという戦略です。例えば、コピー機本体は安くしてインク代を高くするとか、携帯電話本体を安くして通話料を高くするといったことです。この価格はキャプティブ価格とも言いますが、キャプティブとは「捕虜」とか「とりこ」という意味で、本体価格を安くして購入させることにより捕虜にしてしまうのです。ちなみに、ラスベガスのホテル代はかなり安く、大金を所持している顧客は無料ということですが、賭け事に金を使ってもらうためだそうです。

3.割引による価格設定戦略

(1)現金割引

企業間の売買では通常掛けで売買(売掛・買掛)しますが、現金の場合には割引するということです。これは当然で、金利や集金などのためのコストがかからないためそれだけ安くするということです。

(2)数量割引

大量に購入する顧客には安くするということです。これも当然で、大量に購入してくれればそれだけ、手間(販売費用)も、輸送費用、在庫費用などもかからないので安くするわけです。

(3)機能割引

本来は販売する側が実施(負担)する機能(役割)を顧客側に実施(負担)してもらう場合に、それだけ安くするということです。例えば、販売する側が商品を運ぶ代わりに顧客に運んでもらうとか、顧客に他の顧客を紹介してもらうとかです。機能割引はメーカーと卸との取引、卸と小売との取引、小売と消費者との取引などいろいろな場面の取引で行われています。

(4)アローワンス

メーカーが流通業者に対して行う割引で、メーカーが意図する公告、陳列などを流通業者が実施した場合に割引されます。

(5)リベート

アローワンスと同様、メーカーが流通業者に対して行う割引で、アローワンスがその都度、短期的に行われるのに対して、リベートは流通業者との関係を長期的に維持するために行われる割引で、通常、一年に一回行われます。つまり、リベートは流通業者の利益をメーカーが補填するものです。よって、外国企業からメーカーと流通業者との癒着とみなされ、自由競争を阻害する日本の悪しき慣習であると考えられています。

(6)特売価格

販売促進のために通常価格より大幅に値引きする、いわゆる値引き販売(セール)における価格のことです。特売品を「目玉商品(ロス・リーダー)」と言います。この狙いは目玉商品で顧客を引き付けておいて、他の商品を衝動買いしてもらうことです。よく、「普段お世話になっているお客様のために赤字覚悟で」などと言いますが、本音は衝動買いを誘うことです。通常、消費者が計画的に買い物をする割合は20%ぐらいで、衝動買いが80%ぐらいですので、この心理を利用するわけです。

(7)季節割引

季節によって需要が停滞する商品について、需要を喚起するために割引することです。季節割引に似た割引で、平日に割引する曜日割引とか、早朝に割引する時間割引などがあります。

(8)トレードイン・アローワンス

モデルチェンジを繰り返している商品の場合、旧モデルを使用している顧客に対して、新モデルを購入する時に割引するものです。パソコンソフトに良く使われます。

(9)ポイント付与

ポイントカードを発行して、買い物の都度、金額に応じてポイントを付与するもので、通常、1ポイントが1円に換算され、現金と同様に扱われるため実質的な割引となります。

(10)キャッシュバック

クレジットカードを使用して買い物をした場合に、買い物をした金額に応じて現金をもらえるものです。本来は、支払いを先延ばしするいわゆる割賦販売なので、支払う金額は現金払いより利息分だけ高くなるのですが、この支払う金額を買い物時に割引するものです。狙いは、クレジットカードを利用してもっと買い物をしてもらおうということです。

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