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開発&コンサルティング

第2章 ターゲット(標的市場)の選定

2-1 市場と商品・製品の関係

最近は、メーカーでも製品開発というよりも、商品開発という場合が多くなってきました。それは、顧客志向(マーケティング志向)の現れだと思われます。つまり、常に、顧客の立場で考えるようになっているためです。よって、本稿においてもできるだけ商品開発ということばを使うようにします。

さて、商品開発を行う場合に最初に行わなければならないことはターゲット(標的市場)の選定です。なぜなら、どの市場のどのような顧客ニーズを満たす商品を開発するかを決めなければ、商品開発はできないからです。また、たとえ、技術シーズ(技術の種、技術的なアイデアや特許など)を基に商品開発を行うとしても、顧客ニーズを満たすことができなければ全く売れない商品になってしまうからです。

さて、ターゲットを選定する場合に、注意することがあります。経営学の教科書の経営戦略のページには必ず書かれているのですが、アンゾフの成長ベクトルというのがあります。

<アンゾフの成長ベクトル>
市場\商品現商品新商品
現市場市場浸透商品開発
新市場市場開拓多角化

この表において、現市場と新商品の交差するところに商品開発と書かれており、新市場と新商品の交差するところに多角化と書かれています。多角化というのは既存事業とは全く異なる新しい事業分野に進出することを言います。したがって、多角化は新市場に新商品を販売(投入)することになるのです。

この表を見てちょっとおかしいと思いませんか。新商品と言うのは開発して新商品になったのですから、現市場に新商品を販売(投入)することが商品開発であるわけがありません。順序が違います。先に商品開発を行ってから、開発した新商品を現市場に販売(投入)するのです。

また、現市場(既存市場)に対して商品開発すべきか、新市場に対して商品開発すべきかは愚問です。なぜなら、現市場(既存市場)の欲求やニーズに応えるために行った商品開発が新市場の欲求やニーズにも応えることになり、その結果、新市場の開拓にもなるからです。つまり、開発した新商品は、既存市場にも新市場にも共通の同じ新商品なのです。

ちなみに、現市場に新商品を販売(投入)するのは現市場(既存顧客)の買い替え需要を促して市場の刷新を図るためです。あるいは、計画的に現商品を売れなくして(計画的陳腐化という)新商品を販売するためです。

要するに、商品開発は現市場(既存顧客)の買い替え需要を促して市場の刷新を図る(計画的陳腐化)だけでなく、新市場開拓のためでもあるのです。つまり、市場刷新(計画的陳腐化)や市場開拓は目的であって商品開発は目的達成のための機能(役割)なのです。

ちなみに、アンゾフの成長ベクトルは、目的と機能(役割)とを混同して表示しているために、おかしなものになっているのです。ところで、機能(役割)と手段とは異なります。機能は抽象的な役割、働きなどですが、手段は具体的な方法です。

<筆者が修正した成長ベクトル>
市場\商品現商品(商品開発後の)新商品
現市場市場浸透市場刷新(計画的陳腐化)
新市場市場開拓市場開拓(多角化)

<機能(役割)と目的の関係>
機能(役割)目的上位目的
現商品を販売促進する現市場への浸透を図る売上を増大する
新市場を開拓する
新商品を開発する現市場を刷新する(計画的陳腐化を図る)
新市場を開拓する(多角化する)

もう1つ重要なことがあります。それは、市場と商品との関係です。市場とは需要と供給の場であり、需要と供給がなければ市場は存在しません。需要側が顧客であり、供給側が企業です。顧客の欲求やニーズという需要に対してそれらを満たす商品を企業が供給するという関係です。よって、顧客も企業も市場を構成するものであり、顧客の欲求やニーズも商品も市場を構成するものです。商品がなければ需要も供給もないわけですから市場もないのです。

何が言いたいのかと申しますと、アンゾフのように市場対商品という単純な関係ではないということです。市場対商品という関係で捉えていては商品開発はできません。なぜなら、市場を構成するのは、供給側の企業、需要側の顧客、それに企業が供給する商品及び顧客の商品に対する欲求・ニーズの4つがあるからです。この4つのうち、どれが欠けても市場は成立しません。

アンゾフは自社の顧客だけを市場とし、その市場と自社の商品だけの関係を考えているのです。これでは、商品開発を行う場合に、自社の顧客と自社の商品だけを考えてしまうのです。他社の顧客も他社の商品も含めて考えなければなりません。他社の顧客、他社の商品を含めて検討することが商品開発にとって重要なのです。

さて、昔は顧客のニーズと企業の技術シーズとの2つが商品開発の出発点と考えられておりましたが、現在では技術シーズから商品開発を行うことはあまりありません。たとえ技術シーズが存在するとしても開発する前に必ず顧客ニーズの探索を行います。開発したけれども売れなかった、というリスクを回避するためです。

高度経済成長期には、商品が不足しており、作れば売れた時代でしたので、技術シーズを基に商品開発を行うことがありましたが、現在では商品があふれているので、企業はいかに顧客のニーズをつかみ、ニーズを満たす商品を開発するかが重要になっているのです。以上の点を踏まえたうえで商品開発について順次解説していきます。

ここで、ニーズと欲求(ウォンツ)の意味の違いを確認しておきます。マーケティングの大御所であるフィリップ・コトラー氏によれば、ニーズとは「何かに対する人間の欠乏状態」を言います。つまり、ニーズは具体的なものではなく、何かわからないけれど欠乏している状態のことです。要するに、顧客自身が何かが欠けていることはわかるが、それが何かはわからない状態なのです。

一方、欲求(ウォンツ)は具体的な商品ですが、国や地域によりあるいは人により、また状況によるより異なるのです。わかりやすい例で言えば、のどが渇いたと言うのはニーズであり、水が欲しいとか、ジュースが欲しいと言うのは欲求(ウォンツ)です。また、腹が減ったと言うのはニーズであり、ラーメンが食べたいとかステーキが食べたいというのは欲求です。したがって、企業は顧客ニーズをつかんで、ニーズを満たす具体的な商品を開発し提供するのです。

ちなみに、ニーズとウォンツの意味を間違って理解している企業や間違って書いてある本がよくあります。例えば、ニーズは潜在欲求でウォンツは顕在欲求であるとか、ニーズは市場全体(顧客群)の欲求でウォンツは個人の欲求であるとかです。あるいは、各企業が勝手に定義していたりします。しかし、最初にこれらの言葉を定義して使用したのはフィリップ・コトラー氏ですから、フィリップ・コトラー氏の定義に従うべきです。

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