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第97回 2013年版中小企業白書は人を馬鹿にしている(3)
(2013年7月12日)

第3章は省略します。

第4章は情報技術の活用である。概要には、「中小企業・小規模事業者の経営課題は高度化・複雑化している。ITはそうした経営課題への対応のために強力な手段となり得る。財務・会計、人事・給与管理等の後方支援業務でのITの活用という、従来からある取組以外にも、生産・在庫管理、営業力の強化、新規顧客の獲得等、生産性や競争力の向上のために、ITを活用する企業も出てきている。」とあり、さらに、「本章では、中小企業・小規模事業者のITの導入の現状、経営課題に対するITの活用の状況を分析し、更なるITの導入・活用のために必要となる対応を検討する」と書かれている。

第1節は、「ITの導入の現状」である。まず、ITの普及による市場や経営環境の変化について書かれている。中規模企業、大企業では「業務スピードの要求増大」と回答する企業が最も多くなっている。小規模事業者で最も多い回答は、「同業他社との競争激化」となっているが、「特段の変化はない」と回答する事業者も3割近くいる。

IT導入の現状については、2007年と2012年で比較すると、着実に進んでいる。また、2012年で自社ホームページの開設を見ると、小規模事業者で46%、中規模企業で80%、大企業で95%となっており、小規模事業者のIT導入があまり進んでいない。

小規模事業者による自社ホームページの開設の有無と販売先数の変化を見ると、開設している事業者は、「大幅に増加した」と「やや増加した」で37.8%、「変わらない」が51.3%、「やや減少した」と「大幅に減少した」で10.8%となっている。それに対して、開設していない事業者では、「大幅に増加した」と「やや増加した」で8.7%、変わらないが72.4%、「やや減少した」と「大幅に減少した」で18.8%となっている。したがって、ホームページの開設が販売先数の増加につながっていることが確認できる。 ホームページの開設については、無料で作成するサービスが出てくるなどコストは低くなっている。商圏が限られる地域の小規模事業者にとって、ホームページの活用はその制約を乗り越える手段となり得ることから、一層の活用が期待される。

「財務・会計」「人事・給与管理」など、パッケージソフトの割合が高い業務領域では、小規模事業者、中規模企業ともにITの導入が進んでいる。一方で、「生産」「在庫管理」など、他社と差別化し競争力の源泉となる業務領域で、ITの活用が重要だが、これらの分野では自社開発やオーダーメイドが必要であり、小規模事業者より中規模企業、中規模企業より大企業と規模が大きいほど導入が進んでいる。つまり、規模別の格差が大きくなっている。

スマートフォンやタブレット型端末、ツイッターなどの新しい情報技術についても、小規模事業者より中規模企業、中規模企業より大企業の方が活用が進んでいる。発展する情報技術を更に活用することが期待される。

第2節は、「経営課題とITの活用」である。7割超の企業が、「コスト削減、業務効率化」を経営課題として重視しており最も多い。次いで、「営業力・販売力の維持・強化」「新規顧客の獲得」を重視する企業が多い。しかし、小規模事業者、中規模企業ともに、これらの経営課題に対してITを導入していない企業が多い。「コストの削減、業務効率化」についてITを導入した企業の割合を見ると、小規模事業者で3割強、中規模企業では6割弱である。

第3節は、「ITの導入・活用の効果」である。まず、ITの活用を必要と考えているが、導入していない理由を見ると、5割超の企業が、「導入の効果が分からない、評価できない」と回答し最も多くなっている。次いで、「コストが負担できない」と回答している企業が多い。さらに、「ITを導入できる人材がいない」「従業員がITを使いこなせない」が多くなっている。

次に、「営業力・販売力の維持・強化」という経営課題に対するITの導入・活用と既存販売先との関係の変化について見ると、小規模事業者、中規模企業共に、ITを導入し効果が得られた企業が、取引先との関係について「変わらない」とする割合が最も高い。

実は、上記のマーカーで色を付けた「変わらない」の部分を白書では、「強まった」としている。これは明らかに記述の間違いである。故意にそうしているのかもしれない。実際の数字は、小規模事業者では、「変わらない」が65.9%、「強まった」が26.2%であり、中規模企業では、「変わらない」が71.3%、「強まった」が25.3%となっているので、明らかに「変わらない」の割合が最も高い。

ちなみに、ITを導入したが効果が得られていない企業では、小規模事業者では「強まった」が9.3%、「変わらない」が79.6%となっており、中規模企業では「強まった」が8.7%、「変わらない」が83.5%となっているため、これらと比較して故意に「強まった」としている可能性がある。ITを導入し効果が得られた企業とITを導入したが効果が得られなかった企業とを比較して、効果が得られた企業の方が取引先との関係が「強まった」割合が高いのは当然であろう。効果が得られたのだから。ITを導入すべきことを強調したいがため、故意にアンケート結果と異なることを白書に書くのは許されることではない。人を馬鹿にしているのかと言いたい。

「新規顧客の獲得」という経営課題を解決するためのITの導入・活用と、販売先数の増減を見ると、ITを導入し、効果が得られている企業では、小規模事業者、中規模企業共に、販売先数が「増加した」と回答する割合が最も高くなっている。

ITの導入の効果が得られた理由は、小規模事業者では「ITの導入の目的・目標が明確だった」ことを挙げる事業者が最も多く、次いで、「経営層が陣頭指揮を執った」が多い。一方、中規模企業では、目的・目標を明確にすることに加えて、「業務プロセスの見直しを行った」「システムの仕様を十分検討した」「現場が積極的にシステムの検討に参加した」などを挙げる企業が多い。ITの導入の効果を得るためには、このような様々な取組が必要である。

第4節は、「更なるITの導入・活用のために」である。ITの導入・活用の課題について見ると、小規模事業者、中規模企業共に、「IT関連のコストの負担が大きい」とする割合が最も高く、次いで、「IT人材が不足している」となっている。その次に、割合が高いのは、小規模事業者では「経営者のITの活用能力が不足している」であり、中規模企業では「従業員のITの活用能力が不足している」である。

IT人材不足の現状を見ると、小規模事業者では45.9%が不足しており、中規模企業では64%が不足しているとしている。しかし、小規模事業者ではIT人材を必要としていないが32.9%となっている。IT人材不足の原因としては、若手や中堅を中心とした人材難が考えられる。

IT関連のコスト負担や人材不足への対応策の一つとして、クラウド・コンピューティングの利用が考えられる。クラウド・コンピューティングは自社でサーバやソフトを所有する必要がなく、利用分のみ費用を支払うことから、規模の大きくない企業でも低コストでITの活用が可能となる方法として期待されている。「IT関連のコストの負担が大きい」「IT人材が不足している」とする割合が高い中規模企業では、約3割がクラウド・コンピューティングを「よく知っている」と回答し、約4割が「聞いたことがある」と回答している。しかし、「利用している」と「利用を検討している」と回答した企業は約2割に過ぎない。大企業と比較して利用が進んでいないと言える。

クラウド・コンピューティングのメリットについて、100人以下の企業では「技術的な専門知識がなくても導入できる」が最も多く、101人から300人の企業では「初期コストが安い」が最も多い。では課題は何であろうか。101人から200人の企業では、「システムの信頼性・安全性が不十分」が最も多く、201人から300人の企業では「既存システムとの連携ができない」が最も多い。

経営者が、自身のITの活用能力向上に取り組んでいる状況を見ると、小規模事業者では5割強が取り組んでおり、中規模企業では約7割が取り組んでいる。具体的には、小規模事業者は「自己学習(書籍、通信教育等)」が最も多く、中規模企業では「セミナー・研修への参加」が多い。

業務プロセスの見直しの範囲について見ると、小規模事業者では「見直さなかった」が59.2%と最も多く、中規模企業では「部門内や業務内で見直した」が34.7%で最も多く、大企業では「部門や業務を超えて見直した」が44.3%で最も多くなっている。

情報セキュリティに関して5割近くの企業でトラブルが生じている。最も多いのが「システムダウン」であり、次に多いのが、「コンピュータウィルス感染」である。9割以上の企業が何らかの対策に取り組んでおり、最も多いのが「ウィルス対策ソフトを導入」であり、次に多いのが「データのバックアップを実施」である。

中小企業・小規模事業者のITの活用は、業種によっても違いがある。それぞれの企業では、業種の特徴を踏まえながら、自らに合ったITの活用を進めることが必要である。情報技術は利便性を向上させる方向でますます進歩し、身近なものとなっており、その活用は多くの中小企業・小規模事業者にとって避けられないものとなりつつある。我が国の雇用や地域を支える中小企業・小規模事業者において、更なるITの導入活用により、新たな活力を生み出すことが期待される。

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