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第96回 2013年版中小企業白書は人を馬鹿にしている(2)
(2013年7月10日)

第2章新事業展開では、概要に、「中小企業・小規模事業者が、資金・人材等の課題を乗り越え、成長分野で新事業展開する姿を示す」と書いてある。今度こそ期待しよう。きっと、資金・人材等の課題を乗り越え、成長分野で新事業展開する姿が示されていることだろう。

第1節では「新事業展開を実施した企業の特徴」が書かれている。ここではまず、新事業展開を事業転換と多角化とに分類している。事業転換とは10年前と比較して主力事業が変わった場合をいい、多角化とは事業転換以外をいう。新事業展開をした事業所の割合は、小規模ほど少なく(約15%)、大規模ほど多く(約40%)なっている。その内訳は小規模ほど多角化(約5%)より事業転換(約10%)が多く、大規模ほど事業転換(約15%)より多角化(約25%)が多い。

3年後の業績見通しは、新事業展開を実施したことがない企業より、実施した企業の方が売上高、経常利益ともに高くなっている。当然であろう。業績見通しが高くなければそもそも新事業展開など実施しない。しかし、新事業展開を実施したが業績見通しが減少傾向となっている企業も、事業転換で約20%、多角化で26%以上ある。

新事業展開を実施した企業は、実施していない企業に比べて、自社ブランドの製商品・サービスを保有している割合が高い。個々の企業の経営努力による自社ブランドの確立が、結果的に事業転換等を可能にし、業績向上に結びついている。

第2節では、「新事業展開における事業分野の選択理由と効果」について書かれている。新事業の事業分野の選択理由を尋ねると、「自社の技術・ノウハウを活かせる」が最も割合が高く、次に、「自社製品・サービスの提供ルートを活かせる」が挙げられている。経営資源に乏しい中小企業・小規模事業者が既存の経営資源を最大限に活かせる分野を選択していることがわかる。

効果については、「企業のPR・知名度の向上」「信用力向上」「将来性・成長性」等の項目でよい影響があったとする企業の割合が高い。しかし、「企業利益の増加」については、約50%の企業がよい影響があったとしているが、約18%の企業では悪い影響があったと回答している。なお、新事業展開を実施しようとしている分野としては、今後の成長が見込まれる分野に集中している。

第3節では、「新事業展開の課題」について書かれている。規模別に見ると、小規模事業者では「自己資金が不足」「資金調達が困難」となっており、中規模企業では、「人材の確保が困難」「新事業経営に関する知識・ノウハウの不足」と回答する企業が多くなっている。また、「販売先の開拓・確保が困難」は、規模にかかわらず課題となっている。資金の調達方法として今後活用したいものは、融資の他に、補助金・助成金、資本制融資(劣後ローン)などとなっている。

以上のような様々な課題に直面しているが、こうした現状を打開するために、互いに連携し、不足している経営資源を相互補完する取組も一つの方法である。そこで、企業連携を行っている企業に連携の目的を尋ねると、「既存事業の取引先の拡大」が最も多く、「新たな製品・サービスの開発・販売」が次に多くなっている。そして連携の結果、大きな成果が上がっている。

第4節では、「今後の新事業展開に対する意向」について書かれている。新事業展開を実施した企業では、約6割の企業が、今後の新事業展開について積極的な意向があるのに対して、実施していない企業では、そのほとんどが消極的である。新事業展開を実施する予定がない企業は、「有望な事業の見極めが困難」「既存事業の経営がおろそかになる」のように、情報収集・分析不足が原因である。

新事業展開を実施した企業で、新事業展開を実施する前に取り組んだことを見ると、「自社の強みの分析・他社研究」「既存の市場調査結果の収集・分析」の割合が高くなっている。こうした取組によって、最適な事業分野の見極めが可能となり、また、新事業展開で成果を上げた企業とそうでない企業とで、大きな違いが見て取れ、最終的な成果を左右する要素にもなっている。

ところで、過去10年の間に新事業展開を実施した企業のうち、約半数が失敗している。また、その約80%の企業が損失を被っている。新事業から中止・撤退した理由は、「期待したほどの市場性・成長性がないと判断した」が最も多く、次に「販路開拓が困難だった」となっている。よって、新事業展開する際には、進出する市場の成長性等について丁寧に情報収集し、失敗した場合も含めて入念に準備する必要がある。

さて、最初の概要に書かれていた、「中小企業・小規模事業者が、資金・人材等の課題を乗り越える姿」はどこに書いてあるのだろうか。どこにも書いていない。第三節で課題が資金・人材等にあることは書いてあったが、それらを乗り越える姿については何も書かれていない。様々な課題を乗り越える一つの方法として連携が必要だと書かれている。しかし、連携によって資金・人材等の課題をどう乗り越えたのかについては何も書かれていない。結局、施策と事例が紹介されているだけである。第2章についても、期待が裏切られた。

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