次ページ  目次

経営相談どっと混む

第95回 2013年版中小企業白書は人を馬鹿にしている(1)
(2013年7月8日)

2013年版中小企業白書はその副題に、「自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者」とあるように、自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者について書かれているに違いない。そこでまず、概要を見ると、「地域や社会を支える中小企業・小規模事業者は、変化する事業環境に合わせ、経営を変革させている。起業・創業、新事業展開、事業承継、情報技術の活用等に焦点を当て、その活動を明らかにする。」と書かれている。よって、今年の白書はきっと、変化する事業環境に合わせ経営を変革させている活動が明らかになっていることだろう。これは期待できそうだ。

次に、目次を見ると、第1部は「2012年度の中小企業の動向」、第2部が「自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者」となっている。このほかに、「過去50年の中小企業白書を振り返って」とある。そこで、第2部を中心にそのポイントを書くことにする。第2部第1章は「起業・創業」、第2章は「新事業展開」、第3章は「次世代への引継ぎ(事業承継)」、第4章は「情報技術の活用」となっている。そこで、第3章については省略し、第1章、第2章、第4章についてポイントを書くことにする。

第2部第1章起業・創業では、「起業・創業は、産業の新陳代謝を活性化させ、経営資源の有効活用を図り、雇用を創出する上で不可欠。しかし、開廃業率は米英に比べて低迷しているのが実情」と書かれている。 「起業して間もない企業、いわゆるスタートアップ企業が、継続的に発展・成長するためには、自己 変革を重ねることで、事業を進める上で直面する様々な課題に、柔軟に対応する必要がある」と書かれている。そこで、きっと、スタートアップ企業が自己変革を重ね、様々な課題に柔軟に対応する活動が書かれているに違いない。

「2010年の開廃業率は、日本が開業率4.5%、廃業率4.1%であるのに対して、米国では開業率が9.3%、廃業率が10.3%、英国では開業率が10.2%、廃業率が12.9%となっている。日本は米英に比較して開廃業率はともに約半分である」と書かれている。つまり、産業の新陳代謝が約半分なのである。

では、実際に起業した人が経営方針として目指していることは何かというと、「規模を拡大したいとする人が約3割で、規模の拡大より、事業の安定継続を優先したいとする人が約7割となっている」という。起業した人でさえ、安定志向であることが分かる。

規模を拡大したいとする起業家のうち、全国または海外に市場を拡大したいとする起業家を「グローバル成長型」、規模の拡大より事業の安定を優先したいとする起業家のうち、同一市町村または同一都道府県の市場を目指している起業家を「地域需要創出型」と、起業形態を二形態に分類している。そして、それぞれ、売上が0の段階を「起業当初(萌芽期)」、売上はあるが赤字の段階を「成長初期」、一期でも黒字になった段階を「安定・拡大期」として、それぞれの段階でどのような課題があるのかその推移について分析している。

分析結果による上位(5位以内)の課題を見ると、まず、「起業・事業運営に伴う各種手続き」については、グローバル成長型も地域需要創出型も、萌芽期だけが課題として挙げられている。次に、「資金調達」については、グローバル成長型も地域需要創出型も、萌芽期より成長初期、成長初期より安定・拡大期の方が課題としてあげる企業の割合が減っている。「経営に関する知識・ノウハウの習得」および「自社の事業・業界に関する知識・ノウハウの習得」については、グローバル成長型では萌芽期だけが課題として挙げられており、成長初期および安定・拡大期では上位には挙げられていない。それに対して、地域需要創出型では萌芽期だけでなく成長初期も課題として上位に挙げられている。

また、「質の高い人材の確保」については、グローバル成長型では萌芽期では課題として挙げられていないが、成長初期および安定・拡大期には挙げられており、しかも成長初期よりも安定・拡大期の方が課題としての割合が増加している。また、地域需要創出型では萌芽期、成長初期、安定・拡大期のいずれの段階でも課題として挙げられており、しかも割合が次第に増加している。

以上の点については、いずれも当然のことであろう。要するに、「資金調達」については起業当初は必要だが成長するにしたがって内部留保が増えるので必要としなくなる。「経営や事業に関する知識・ノウハウ」についてはグローバル成長型ではそもそも当初からこういった知識・ノウハウがなければ全国展開や海外市場に打って出ようとは思わないだろう。よって、課題にはならないのである。

「質の高い人材の確保」と同様、「販路・マーケティング」「製品・商品・サービスの高付加価値化」「新たな製品・商品・サービスの開発」などの課題については、どちらの型の企業でも萌芽期よりも成長初期、成長初期よりも安定・拡大期の方が課題としての割合が増加している。これらについても、当然のことである。つまり、成長するにしたがって課題が高度化していくわけである。

要するに、当然のことを明確にしただけのことで、そもそもこれらの調査や分析が必要だったのだろうか。それよりも、これらの課題にどう取り組んだのかが知りたいのだが、それについては何も書かれていない。単に、施策を掲載し事例を紹介してあるだけである。改めて第1章の各節のタイトルを見ると、第1節は「多様に展開する起業」、第2節は「萌芽期における起業・事業運営上の課題」、第3節は「成長初期における起業・事業運営上の課題」、第4節は「安定・拡大期における起業・事業運営上の課題」となっており、第5節はない。つまり、課題についてだけしか書かれていないのである。スタートアップ企業が自己変革を重ね、様々な課題に柔軟に対応する活動についてはどこにも書かれていない。まるで狐につままれたようである。

Ⓒ 経営相談どっと混む

次ページ  目次