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序 思考の関所について

「人間は考える葦である」と言ったのは哲学者パスカルですが、人間は本来、考える生き物です。考えることを本能として備えている生き物なのです。ところが、ほとんどの人は大人になるまでその本能を押さえつけられて育てられたのです。考えることよりも理解して覚えることを強制されたのです。つまり、小学生のころより知識の習得を中心に育てられ、また、受験勉強に明け暮れたのです。

ところが、社会に出ると知識ではなく知恵(アイデア)が求められるのです。なぜなら、消費者(生活者)の欲求やニーズに応え、人の生活を豊かにしようとするには知恵(アイデア)が必要だからです。 考える訓練をあまり受けていない人たちに、知恵(アイデア)を出せと言っても、そう簡単に出せるわけがありません。その理由は、考える訓練を受けていないからですが、それだけではありません。そもそも、考えることを邪魔する関所が人間にはあるのです。それは、思考の関所と言われているものです。思考の関所は三つあって、認識の関所、感情の関所、文化の関所です。

認識の関所とは、知っていたり経験したりしたことは考えることができるが、全く知らないことや経験したことがないことについては考えることができない、ということです。当たり前のことだと思います。感情の関所とは、好きなことは考えられるが嫌いなことは考えられないということで、これも当然でしょう。また、文化の関所とは、生まれ育った環境による生活習慣や価値観などが人によって異なるために、異なる生活習慣や価値観はわからないし、考えが及ばないということです。これも理解できると思います。

そんなわけで、考えようとしても関所に邪魔されてしまうわけです。よって、知恵(アイデア)が出ないのです。そこで、これらの関所を通り抜けられるように、訓練をすればよいのです。これはそれほど難しいことではありません。これらの三つの関所が自分には存在するのだということを認識して、常に、関所を通り抜ける努力をすればよいのです。そのためには、

  1. 人の話を良く聞くこと。なぜなら、人は自分とは異なる知識を持っており、異なる経験をしているから。
  2. 自分の嫌いな物や嫌いなこと、また嫌いな人を好きになろうとすること。
  3. 人のしぐさや行動を理解しようとすること。
  4. これまで会ったことのないような人と会うこと。
  5. これまで行ったことのない場所に行くこと。
  6. これまでやったことがないことをやってみること。

などです。これらが必要だということはお分かりかと思います。要するに、自分と人との違いを常に意識して、自分の関所を取り除く訓練をすることです。また、自分がこれまでかかわったことがないような事柄にできるだけ触れることです。そうすれば、徐々に思考の関所が緩められて、通り抜けられるようになるのです。これらを日常行うことが知恵(アイデア)を出すための基礎的な訓練になるのです。

特に筆者がお勧めするのは大自然に触れることです。大自然は人間を始め動植物が太古の昔から生きている場所であり、人間や動植物は大自然の恩恵を受けて暮らしているのですから、大自然から学ぶことは山ほどあるのです。ただし、大自然から学ぼうとしなければダメです。

ちなみに、特許法における発明の定義は、「発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」です。つまり、発明は自然法則を利用しているのです。したがって、発明しようとする人は大自然から学ぶ必要があるのです。大自然から学ぼうとしているうちに自然法則に気付き、発明ができるようになるのです。これまでの人類の歴史で、現在までに発見されている自然法則は全体の5%程度にすぎないと言われています。ですから、大自然には無限のアイデアの種が眠っているのです。

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