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第6章 情報技術の活用

6-1 情報化課題の抽出(1)

今回説明するのは、業務効率化(ムダな業務の削減)のための情報化課題の抽出であって、コスト削減が目的です。売上増大のための情報化課題の抽出については次回解説いたします。

さて、これまで説明してきたのは創意工夫による業務の効率化です。創意工夫による業務の効率化が終了したならば、次に情報技術を活用した効率化を検討します。このために、情報化課題を抽出する必要があります。ところが、この情報化課題の抽出が難しいのです。なぜなら、通常、情報化できそうなものは何でも情報化してしまい、その結果ムダな投資をしてしまうことが多いからです。実際には、安易にITベンダーの誘いに乗ってしまう企業が多いのです。そこが、ITベンダーの狙いでもあります。

このため、最近では情報化に対して神経質になっていて、情報化には何でも拒否反応を示す企業も増えています。そこで、ITベンダーでは、ソフトを賃貸(Saas)したり、クラウド・コンピューティングを提案したりしています。クラウド・コンピューティングはネット上にいろいろなソフトウエアや情報システムを置いておき、顧客が必要な時に、必要なだけ賃貸する方法です。政府も中小企業白書などで、中小企業に適した方法だと紹介しています。それで、これらが現在流行しています。確かに、ソフトウエアやシステムを購入するのではなく、借りるわけですから安価ですし、使ってみて問題があったら止めることもできます。

Saasとか、クラウド・コンピューティングなどとかっこいい言葉を使っていますが、本質は、昔からあるレンタル、あるいはリース商法です。レンタル、あるいはリースを利用する場合、よくあるトラブルは、「使ってみたら自社に合っていなかったが、既に使い慣れてしまっているので、いまさら変えることができない」というものです。つまり、使い慣れるまで使わなければ、自社に合っているかどうかが分からないのです。よって、借りるにしても、良く検討しなければなりません。

ところが、第3章で説明した目的思考、重点思考、ユーザー志向、市場(顧客)志向などで検討してきた企業では、情報化に失敗することはありません。なぜなら、これらの考え方が、情報化のあるべき姿だからです。つまり、創意工夫による業務効率化も情報技術を活用した業務効率化もあるべき姿は同じだからです。

それは、ちょっと考えてみればお分かりかと思います。当たり前の考え方だからです。ここで改めて、目的思考、重点思考、ユーザー志向、市場(顧客)志向の4つの考え方について、復習してみてください。業務を情報化する場合のあるべき姿としてどれも必要な考え方であると思いませんか。もう一度、「3-1 ムダな業務を廃止・削減するための基本的考え方」を読んでいただき、また、それぞれの考え方について詳しく書いてある、「3-2」から「3-11」までを読んでいただきたいと思います。

したがって、情報化課題を抽出するには、目的思考、重点思考、ユーザー志向、市場(顧客)志向をそのまま当てはめれば良いのです。創意工夫による効率化を検討してきた企業はもうお分かりかと思いますが、創意工夫による効率化に限界を感じた部分を情報化すれば良いだけなのです。つまり、創意工夫に加えて、情報技術を活用すれば、さらに効率化できる部分を情報化課題にすれば良いわけです。

それならば、創意工夫による効率化の検討をしなくても、最初から情報化すれば良いではないかと考える人がいたら、全く分かっていないと言わざるを得ません。そもそも、ムダな情報化によって、ムダな投資をする企業が後を絶たないのは、創意工夫による効率化を行わないからです。創意工夫による効率化を行ってから、情報技術を活用した効率化を行わなければなりません。なぜなら、何度も言いますが、人の意識(考え方・価値観)が変わらないからです。

人の意識(考え方・価値観)を変えるというのは、業務を実施する場合に、常に、目的思考、重点思考、ユーザー志向、市場(顧客)志向で業務を行うようにすることです。これらの考え方が身についていれば、業務を実施するときに自然に効率的な業務処理を行うことができるようになります。よって、情報化する場合においても、何を情報化すべきかが分かるわけです。

情報化による効率化課題が抽出できたなら、次にこれらの課題の優先順位をつけます。優先順位は会社成長のために必要かどうかで判定しますから、通常は、投資対効果で判定します。そして、優先度の高い課題から情報化を進めます。こうすれば、ムダな情報化、ムダな投資をすることはありません。

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