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第5章 業務改革のための経営の骨格(仕組み)の再構築

5-1 経営の骨格の再構築の重要性について

本章から業務改革の説明になりますので、まず最初に、経営の骨格(仕組み)の再構築の重要性について説明します。経営の骨格(仕組み)とは、経営を行うのに必要な基本的な仕組みであって、経営理念、経営戦略、事業領域、経営組織、人事制度、中期経営計画などを言います。これらを見直し、再構築することで、間違いのない業務改革ができるわけです。

なぜなら、通常、業務改革は中期経営計画の達成を目的に行う場合が多いからです。では、中期経営計画を達成する目的は何でしょうか。それは、売上、及び利益を増やすためです。中期経営計画が達成されなければ売上、利益が増えないわけです。業務改革を行っても、経営の骨格がきちんと構築されていない場合には中期経営計画が達成できないのです。このため、業務改革を実施する場合には、まず、経営の骨格の見直しを行って、再構築します。もちろん、常に、これらの見直しを行って、経営環境の変化に対応している企業の場合には、その必要はありません。この場合には、中期経営計画の確認だけを行えば良いわけです。

経営の骨格の再構築が重要なもう1つの理由は、間違った意思決定によってムダな業務を指示命令したり、ムダな業務を実行しないようにするためでもあります。経営環境が変化しているにもかかわらず、従来の仕組みのままであれば、当然、間違った意思決定を行ったり、間違ったことを実行してしまったりするからです。

さて、業務改革活動は、通常、業務効率化活動と平行して実施するか、または業務効率化活動に先行して実施します。なぜなら、経営の骨格の再構築が終わらないうちに、業務効率化活動を行うと、効率化が進むにしたがい、業務を廃止・削減して行きますので、人により効率化活動の途中でやるべき仕事がなくなってしまったり、時間が余ったために新たにムダな仕事を作り出してしまうことがあるからです。

経営の骨格の再構築により、中期経営計画がきちんとできていれば、新規業務、強化業務が既に設定されているわけです。したがって、効率化によって余った人や時間を順次、業務再編成を行いつつ、人員の再配置(人事異動)により新規業務や強化業務にシフトしていくことができるわけです。

さて、業務改革はあくまで業務が対象です。よって、通常は経営戦略や経営組織は所与のものとみなします。ちなみに、組織を対象に改革するのであれば、それは業務改革ではなく組織改革となります。また、業務改革の結果、組織が変更されることはよくあることで、それは限定的であり結果としてそうなったに過ぎません。

本来、業務改革は業務発生の元になる中期経営計画の確認から行います。しかし、実際には、中期経営計画の見直しや立案から行わざるを得ません。なぜなら、中期経営計画が何の根拠もなく立案されていて、形だけ(絵に描いたもち)のために計画通り実施できないという企業が多いからです。計画通り実施できない理由としては、人材がいないとか、資金がないとか、技術がないとかがあります。つまり、経営資源が不足していることがあります。

しかし、それだけではありません。その多くは経営の骨格をきちんと構築していないからなのです。つまり、経営理念や経営戦略、ドメイン(事業領域)さえ設定していない企業が多いのです。あるいは、これらを設定していても、その根拠が曖昧であるとか、従業員に徹底していないとかで、その意味内容が従業員に伝わっていないといったこともよくあります。

また、経営戦略やドメイン(事業領域)は環境の変化により変えなければならないのですが、ほとんどの企業では環境の変化に迅速に対応できていません。なぜなら、定期的に経営環境の分析を行っていない企業が多いからです。経営環境は常に変化しているわけですから、経営環境の分析を定期的に行い、経営環境に適した戦略、事業、組織、中期経営計画などを基に経営を行う必要があるのです。

そんなわけで、ほとんどの企業では経営の骨格を再構築することから始めなければならないわけです。経営の骨格を再構築する基本ステップは通常、

経営理念の見直し・設定⇒経営環境の分析⇒経営戦略の見直し・設定⇒ドメイン(事業領域)の見直し・設定⇒組織構造の再編成⇒人事制度の見直し・設定⇒中期経営計画の見直し・設定⇒経営計画の見直し・設定⇒業務計画の立案(業務設計)、となります。

かつては、経営理念の見直し・設定⇒ドメイン(事業領域)の見直し・設定⇒経営環境の分析⇒経営戦略の見直し・設定・・・・・・の順でした。それは、ドメイン(事業領域)を変更することがあまりなかったからです。しかし、昨今、経営環境が目まぐるしく変化するようになったために、事業領域の見直しも頻繁に行うようになったのです。例えば、最近よく聞く、「事業の選択と集中戦略」というのは、経営戦略の1つですが、この戦略によって、事業領域を変更するわけです。よって、この場合は経営戦略が先で事業領域の設定が後になります。

さて、経営の骨格の見直しは、まず、企業の大黒柱とも言うべき経営理念を見直しすることから始め、次に企業を取り巻く経営環境を分析し、その結果に基づいて、経営戦略を立案(見直し・設定)します。そして、経営戦略によって、事業領域を見直し設定します。なぜなら、事業領域は経営環境の変化により変える必要があるからです。要するに、事業の選択と集中(事業の縮小)や新規事業の開発が必要なのです。経営環境が変化しているのに事業領域を変えない企業は次第に衰退し、いずれは倒産してしまいます。事業領域が決まれば、次に事業領域に合った組織を構築(見直し・設定)します。

ところで、組織の構築が先か経営戦略が先か、という議論がありますが、日本では、以前は、組織の構築が先でした。なぜなら、日本では戦略決定と実行が欧米のようにトップダウン方式ではなかったからです。日本では組織の上層部(経営者・役員)と下層部(一般社員)を連結する中間管理層が中心になって経営戦略(案)を立案し、それを上層部が承認決定してから実行するというステップを取っていたからです。

これは、いわゆる日本的経営の特徴である「集団による意思決定と実行」によるものです。よって、組織構築を行ってから経営戦略を立案するのが通例でした。しかし、昨今のように競争が激化し、経営環境が頻繁に変化するようになると、環境の変化に応じて経営戦略や事業を変更する必要が生じてきました。そこで、トップ経営層により、事業の選択と集中、あるいは新規事業開発に係る経営戦略を決定し、これに基づき、事業領域を決定し、組織を構築(再編成)するようになって来ました。

そこで、環境の変化に機敏に対応できるような経営の骨格(仕組み)にしなければならないわけです。また、2度とムダな業務を指示命令したり、実行したりしないようにしなければなりません。よって、経営の骨格(仕組み)の再構築を行う必要があるのです。そこで、筆者は経営の骨格を簡単に再構築(見直し・設定)できるようにしました。

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