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2-8 ホワイトカラーにはムダな業務が分からない

これまで説明した業務の見える化の方法を用いれば、1年間のすべての業務を見える化するのに、1人平均、15時間ぐらいでできます。ただし、総務部の場合は1人平均で30時間ぐらいかかってしまいます。1年に1回しか行わない業務が多いためです。それに対し、研究開発部では毎日行う繰り返し業務が多いため、1人平均で5時間ぐらいでできます。

なお、社長や役員の業務については、出張と会議・打合せばかりなので、1年間のすべての業務を見える化するのに、1人平均で1時間ぐらいでできてしまいます。

また、これまで説明した方法はムダな業務も見える化できるので、すぐに廃止・削減の検討に取り掛かることができます。よって、見える化した後は、ムダな業務を順次、廃止・削減していけば良いわけですから、全体の業務時間がしだいに減って行きます。そして、通常、ほとんどの企業では、ホワイトカラー全員の全業務量の20%~25%の削減ができるわけです。

しかし、実際には、ムダな業務を見える化しても、ホワイトカラーにはムダな業務が見えないのです。ホワイトカラーにはムダな業務が分からないのです。なぜなら、普段からムダな業務を探して廃止・削減しようとする意識になっていないからです。このことは、例えば、金鉱石が目の前にあっても、素人には金鉱石だと分からないのと同じなのです。

普段、工場現場の作業改善に従事している生産管理部門のIE技術者でさえ、ムダな業務が分からないのです。同様に、普段、製品のコスト削減や新製品開発に従事しているVE技術者でさえ、ムダな業務が分からないのです。それは、普段、業務(デスクワーク)を対象に改善・効率化を行っていないからだと思います。

そこで、ムダな業務を見える化した後に、いろいろな視点からムダな業務であることを認識してもらう必要があります。そこで、次章(第3章)で順次、いろいろな視点からムダな業務であることを認識してもらいます。つまり、時間をかけてホワイトカラーの意識を変える必要があるのです。このため、少なくとも6か月ぐらいかかってしまうのです。

業務効率化活動は、通常、6ヶ月で終了しますので、活動を始めてから半年後には、業務量の20%~25%、つまり、人件費の20%~25%の削減ができることになります。ただし、業務を実施する時期が来なければ実際の削減はできません。例えば、予算編成の業務時間を削減したとしても、実際に削減できるのは予算編成の時期が来なければできません。

なお、削減できた20%~25%の数値は、筆者がこれまで行って来た数十社のクライアント企業の平均的な実績値です。このうち、一部上場企業の場合には、ほとんどの企業が30%以上の業務量(時間)の廃止・削減を行っています。

では、なぜ、そのようにできるのかと言いますと、工場現場の改善・効率化と同じように徹底的に行うからです。周知のことですが、工場現場ではムダな作業の廃止・削減を徹底的に行っています。まず、工程単位の大まかな分析である工程分析を行って、価値のないムダな工程(作業)を廃止・削減します。

次に、価値のある各工程については要素作業別に時間をストップウオッチなどで測定(時間測定)します。さらに、作業方法を人の動作の単位まで分析(動作分析)して、少しでもムダな作業や動作がないかを調査・分析します。そして、ムダな作業、あるいは動作を発見して廃止・削減していくのです。このように、工場現場では少しでもムダを発見して廃止・削減しようと日々大変な努力を行っています。ですから、工場の現場では改善・効率化が進むのです。

また、工場現場では機械化、IT化(情報化)を進める前に、必ず徹底的に改善(KAIZEN)を行います。しかも、日常の活動として、作業者自身が改善を行っています。例えば、QCサークル活動や改善提案制度などを活用して改善を行っています。

その一方で、ホワイトカラーはいったい何をやっているのでしょうか。ホワイトカラーの生産性が低いのは、何度も書きますが、ムダな業務を廃止・削減しようとしていないからです。その証拠に、経営管理部門(ホワイトカラー)の業務分掌規程を見ると、ほとんどの企業では「業務改善」や「業務効率化」という名称の業務が書かれておりません。つまり、業務の改善・効率化を行っていないということです。

また、「業務管理」という業務もありません。例えば、生産管理部門の業務分掌規程を見ると「作業改善」や「作業管理」という業務は書かれていますが、「業務改善」や「業務管理」という業務は書かれていないのです。つまり、工場現場の作業については改善や管理をするけれど、自部門の業務は改善や管理をしないということです。

このことは、人事部門でも総務部門でも財務部門でも全く同じです。自部門の業務の改善・効率化や業務管理は行っていないのです。そして、経営管理部門(ホワイトカラー)の業務の改善・効率化と言えば、情報化・システム化とか、情報機器の活用となってしまうのです。頭を使って創意工夫をして、ムダな業務を廃止・削減しようとしないで、金を使って業務処理スピードを速くしようとするのです。

しかも、IT化によって業務処理スピードが速くなっても、業務管理を行っていないために、実際には1日だらだらと長時間かけて業務を行っているのです。これではいつまで経ってもホワイトカラーの業務の改善・効率化はできません。つまり、いつまで経ってもホワイトカラーの生産性は向上しないのです。

ところで、本書に書いてある方法は、工場現場の作業の改善方法をそのまま業務に適用したものではありません。時々、工場現場で用いるIE技術を使って、業務を腕時計やストップウオッチで測定している企業を見かけますが、そんなことをしても従業員にバカにされるだけです。

なぜなら、工場現場の作業は主に手足を動かして行うので目に見えますから時間測定ができますが、業務は主に頭を使って行うので目には見えません。よって、時間測定ができません。そこで、筆者は頭の中を見える化するVE技術を使っているのです。

実は、IEは目に見える作業の分析や改善に適した技術ですが、目に見えない頭の中は分析できません。これがIEの特徴です。これに対し、VEは目に見えない頭の中を分析する技術ですが、目に見える作業の分析や改善はできません。これがVEの特徴です。よって、筆者はIEとVEの長所と短所を踏まえて業務に適用し、業務の改善・効率化ができるようにしたのです。詳しくは、『文科系のためのコスト削減・原価低減の考え方と技術』をご覧ください

さて、本書に書いてある方法で業務効率化を行えば、容易にムダな業務の廃止・削減ができます。しかも、頭を使って行うので、投資金額0円で20%~25%の業務量が削減できるのです。それだけではありません。この考え方・方法を習得すれば、今後、ムダな業務を指示命令したり実施したりすることがなくなります。なぜなら、本書に書いてある方法は業務に対する意識(考え方・価値観)を変える方法だからです。

頭を使って行うので小手先の改善・効率化ではありません。と言っても難しい方法ではありません。当たり前の考え方・方法で当たり前のことを実施するだけです。ですから誰にでもできる方法なのです。社長以下、ホワイトカラー全員のムダな業務を自分で廃止・削減する方法です。その方法を本書に詳しく書きましたので、本書を活用してムダな業務を徹底的に廃止・削減して下さい。

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