次ページ  目次

経営相談どっと混む

2-3 業務を見える化する方法

業務を見える化するためには、まず、業務の分類整理を行います。業務分掌規程の見直しと考えれば分かりやすいと思います。と言うのも、多くの企業の業務分掌規定は、業務名称が不明確であったり、業務範囲が不明確であったりするので、業務の重複や空白が生じています。また、業務分掌規程と実際の業務とが異なっている場合が多いです。

このような業務分掌規程では、個々の業務時間を設定し、これを基に個々の業務コストを計算・集計しても、重複したり、集計されない部分が生じたりしてしまいます。つまり、正しい業務コストが計算できません。よって、業務名称の決め方や業務の分類整理の仕方が重要なのです。

そこで、VE技術を業務に適用し、業務の目的と機能の関係で体系的に整理します。そうすれば、重複もなければ空白も生じません。詳しくは、「2-5 業務分類の設定(業務分掌規程の見直し)」をご覧ください。

次に、個々の業務について、見える化するためには、まず業務要件を明確にしなければなりません。 本来、業務を新たに設計する時には、必ず、業務要件を設定します。そして、業務要件を基に業務内容(方法)を決めます。また、業務を実施する時には、まず、業務要件を確認し、業務要件に沿って業務を実施します。そうしなければ、業務ミスをしたり、要件に合わないムダな業務を行ったりしてしまいます。

また、当然ですが、業務要件が異なれば業務内容も業務時間も異なります。「2-1 業務の見える化が難しい理由」で、価値のないムダな業務を発見したり、業務別の時間を測定するのが難しい理由の1つとして、「業務を行う都度、業務内容が異なる」からと書きましたが、それは業務要件が異なるからです。業務要件が決まれば業務内容も業務時間も決まります。

そこで、VEの条件(要件)設定の技術を用いて、業務要件の設定を行います。具体的な設定方法は、「2-6 業務要件の設定」をご覧ください。

ちなみに、業務をIT化するときには、業務の要件定義(要件設定)を行いますが、要件定義はIT化する時だけ必要なのではありません。業務を実施する時には業務要件に基づいて実施するので、業務を設計する時には、必ず業務要件の設定が必要です。

ところが、多くの企業では、業務設計を行う時に業務要件の設定を行わず、また、業務を実施する時にも業務要件の確認を行わないために、業務内容が人により異なってしまい、業務ミスが生じたり、業務要件に合わないムダな業務を行ったりするのです。

この典型的な例が、場当たり的に業務を指示命令し、実施する場合です。業務計画に基づき行う業務(ルーティンワーク)ではなく、上司から場当たり的に業務を指示命令された場合には、通常、業務要件の設定を行わないで業務を行ってしまいます。そして、無意識のうちに、業務ミスをしてしまったり、ムダな業務を行ったりするのです。

また、IT化する時になってあわてて要件定義(要件設定)を行うので、実態と異なる要件定義(要件設定)を行ってしまったり、要件に漏れが生じてしまったりするのです。その結果、IT化する途中の作業で、いわゆる「手戻り」が何度も生じてしまうのです。

ちなみに、IPA(情報処理推進機構)によると、ITシステム開発失敗原因の80%は要件定義に起因しているとのことであり、また、業務をIT化したことのある企業のうち、実に60%以上の企業で「手戻り」が生じているということです。(『ユーザのための要件定義ガイド』参照)

さて、業務要件を明確にした後に、さらに業務を見える化するためには、個々の業務時間、及び個々の業務内容(方法)を明確にしなければなりません。

しかし、その前に業務分類ごとの業務時間を明確にします。詳しい方法は、「2-7 業務時間の設定」をご覧ください。業務時間の設定方法は業務分類ごとでも個別業務ごとでも同じです。業務分類ごとの業務時間が明確になれば、それに賃率を掛けて業務コストを計算します。よって、業務分類(業務分野)ごとのコストが明確になります。

業務分類(業務分野)ごとのコストが明確になっただけで、かなりの改善・効率化の検討が可能です。なぜなら、重要でない業務分野に多くのコストをかけているとか、逆に重要な業務分野にあまりコストをかけていないことなどが分かるからです。

この典型的な例が、多くの企業では予算編成に全業務コスト(人件費)の15%~20%をかけているということです。その逆に、新規顧客開拓や新製品開発に3%~5%位しかかけていないことです。つまり、多くの企業では後ろ向きの業務に多くのコストをかけ、前向きの業務にコストをあまりかけていないのです。これでは企業は成長・発展しません。

次に、個々の業務内容(方法)が誰にでも分かるようにします。つまり、誰もがその業務をマネできるくらいに詳しく記述するのです。例えば、「〇〇報告書作成」の場合、この業務を、(1)△△を見る、(2)△△について考える、(3)△△について書く、(4)△△を見直す、(5)△△を書き直す・・・・・・のように誰が見てもその業務内容(方法)が分かるように分解して記述するのです。これは工場の作業内容(方法)を記述するIEの技術です。具体的な方法は、「2-8 業務内容の記述」をご覧ください。

業務内容の記述は、言ってみれば業務マニュアルの原稿を作成するようなものです。実際に、業務効率化活動や業務改革活動が終了し、業務記述からムダな業務を廃止・削減、あるいは新規業務を追加した後には、業務記述が業務マニュアルとなります。

業務マニュアルは新入社員教育や業務の引き継ぎを行う時だけでなく、業務の管理にも必要です。なぜなら、業務マニュアルは業務内容(方法)が詳しく書かれているわけですから、業務内容(方法)をさらに改善することによって、業務の品質、納期、原価などをより良くすることができるからです。

ところが、ホワイトカラーの多くの人たちは業務内容を記述したことがありません。なぜなら、業務を行う都度、各自の経験と勘によって業務内容(方法)を決めているからです。よって、実際に、「業務内容を記述することなど面倒だ」と言う人が多いです。そういう人は、工場現場の作業マニュアルを参考にしてください。工場現場では、図面及び仕様書を基に作業方法を決め、作業マニュアルを作成しています。作業方法が決まらなければ作業ができません。また、作業計画を立てることも、作業管理をすることもできないのです。

このことは、流通(卸、小売り)業においても、サービス業においても全く同じです。売上が増えるか減るは販売戦略だけでなく販売方法によっても異なります。担当者任せでは売上は増えません。よって、最も売れると思われる販売方法を決め、販売マニュアルを作成しています。最近では、流通業やサービス業でもIE技術が活用されているのです。

よって、デスクワークにおいても、業務要件を基に、業務内容(方法)を決め、業務マニュアルを作成すべきです。そして業務計画を立て、業務管理をきちんと行うべきなのです。

ところが、筆者の知る限り、業務マニュアルを作成し、業務計画を立てて業務管理をきちんと行っている企業はほとんどありません。大企業でもあまり行っていません。チーム(係)ごとに日々の業務計画を立て、チームメンバーが協力して業務を進めている企業はありますが、課や部単位で業務計画を立て、業務管理を行っている企業はあまりありません。大企業においても、業務管理は業務を実施する担当者が自ら行うか、直属の上司が行っている企業がほとんどです。

一方、工場では、どの企業の工場でも、製品ごとの加工・組立計画を、大日程計画(3ヶ月、又は半年の計画)、中日経計画(1ヶ月の計画)、小日程計画(1週間の計画)などと大まかな計画から詳細な計画まで立案し、工場全体で納期(工程)管理を行っています。なぜなら、絶対に納期遅れが生じないように、そして顧客に迷惑をかけないようにしているからです。これもIEの技術です。

また、品質管理も原価管理も専門の部署を設けて管理しています。これらの管理はもちろんホワイトカラーが行っているのですが、製品や部品を対象とした管理なので、直接部門(ブルーカラー)の作業を対象とした管理でもあります。ホワイトカラー自身が行う業務を対象とした管理ではありません。ホワイトカラーが行う業務の管理を専門の部署を設けて行っている企業は筆者の知る限りありません。ホワイトカラーの業務管理が工場の作業管理に比較すると、いかにいい加減であるかが分かると思います。

Ⓒ 経営相談どっと混む

次ページ  目次