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2-2 業務を見える化する方法

1.業務を見える化する技術について

筆者は、主に工場の現場作業の改善に用いるIE(インダストリアル・エンジニアリング:管理工学)と、主に製品のコスト削減や製品開発に用いるVE(バリュー・エンジニアリング:価値工学)とをホワイトカラーの業務(デスクワーク)に適用することにより、業務の改善・効率化ができるようにしました。

その際に、これらの技術をそのまま適用するのではなく、デスクワークに適した方法に変更すると共に、誰にでも簡単に適用できるようにしました。なぜなら、デスクワークを改善・効率化するのはIEやVEの専門家ではなく、ホワイトカラー自身であり、自分が行う業務を改善・効率化できなければならないからです。

さて、IEの目的は付加価値の向上です。よって、IEでは、何はさておき作業の付加価値分析を行います。IEは広範囲の作業単位(工程)から詳細な作業単位(要素作業)、さらに最小の動作の単位まで、工程⇒単位作業⇒要素作業⇒動作、と順に調査・分析して、少しでもムダが発見できれば廃止・削減するという技術です。また、付加価値のある作業については、創意工夫によって、最も良い作業方法(One best way)にする技術でもあります。

一方、VEの目的は製品の価値向上です。製品の使用目的を果たすために、顧客(使用者)が求める機能を過不足なく備えるように、製品や各部品の目的と機能を明確にします。そして、既存製品の中に無用機能、過剰機能、重複機能、不足機能などが存在すれば、廃止・削減したり追加したりします。このような方法で、開発・設計の見直しを行います。また、機能を果たすために最も適した材料や加工方法を探索したり、発想したりして製品づくりをする技術でもあります。

IEもVEも専門的な工学技術であり、習得するには多くの知識・経験が必要です。よって、通常は、それぞれの専門家がいて、IEの専門家は主に工場現場の改善に従事し、VEの専門家は主に製品のコスト削減や製品開発に従事しています。

したがって、これらの技術をホワイトカラーの業務に適用するためには、IEとVEの両方の技術を習得しているだけでなく、ホワイトカラーの業務にも精通していなければなりません。 そのうえ、人事、総務、経理、営業などの文科系の人でも、IEやVEの技術を業務に適用できるようしなければなりません。なぜなら、ホワイトカラーの業務の改善・効率化はホワイトカラー自身が行わなくてはならないからです。つまり、自分が行う業務の改善・効率化を自分で行わなければならないのです。

そこで、筆者はIEとVEの技術の長所と短所を踏まえて、ホワイトカラーの業務(デスクワーク)の改善・効率化が誰にでもできるようにしました。これについて詳しくは、『文科系のためのコスト削減・原価低減の考え方と技術』に書きましたので参考にしてください。文科系のために分かりやすく書きましたので誰にでも分かると思います。

2.業務を見える化するには

さて、業務を見える化するためには、まず、業務の分類整理を行います。業務分掌規程の作成と考えれば分かりやすいと思います。ところが、多くの企業の業務分掌規定は、業務名称が曖昧であったり、個々の業務範囲が不明確であったりするので、業務の重複や空白が生じています。また、業務分掌規程と実際の業務とが異なる場合が多いです。

したがって、個々の業務コストを計算し、集計しても、重複したり、集計されない部分が生じたりしてしまいます。つまり、正しい業務コストが計算できません。よって、業務名称の決め方や業務の分類整理の仕方が重要です。そこで、基本的には業務の目的と機能の関係で体系的に整理します。そうすれば、重複もなければ空白も生じません。詳しくは、次ページ「2-3 業務分類の設定(業務分掌規程の見直し)」をご覧ください。

次に、個々の業務について、見える化するためには、まず業務要件(条件)を明確にしなければなりません。 本来、業務を新たに設計する時には、必ず、業務要件(条件)を設定します。そして、業務要件を基に業務内容(方法)を決めます。ですから、業務を見える化するためには、業務要件を明確にする必要があるのです。

また、当然ですが、業務要件が異なれば業務内容も業務時間も異なります。前ぺージで、付加価値のないムダな業務を発見したり、業務別の時間を測定するのが難しい理由として、「業務を行う都度、業務内容が異なる」からと書きましたが、それは業務要件が異なるからです。業務要件の具体的な設定方法は、「2-4 業務要件の設定」をご覧ください。

ちなみに、業務をIT化するときには、業務の要件定義(要件設定)を行いますが、要件定義はIT化する時だけ必要なのではありません。業務を設計する時には、必ず業務要件の設定が必要です。ところが、多くの企業では、業務設計を行う時に業務要件の設定を行わず、また、新たに業務に取り組む時にも業務要件の確認を行わないために、業務ミスが生じたり、要件に合わないムダな業務を行ったりするのです。

この典型的な例が、場当たり的に業務を指示命令し、実施する場合です。計画された業務(ルーティンワーク)ではなく、上司から場当たり的に業務を指示命令された場合には、通常、業務要件の設定を行わないで業務を行ってしまうのです。そして、無意識のうちに、業務ミスをしたり、ムダな業務を行ったりするのです。

また、IT化する時になってあわてて要件定義(要件設定)を行うので、実態と異なる要件定義(要件設定)を行ってしまったり、要件に漏れが生じてしまったりするのです。その結果、IT化する途中の作業で、いわゆる「手戻り」が何度も生じてしまうのです。ちなみに、IPA(情報処理推進機構)の調査によると、業務をIT化したことのある企業のうち、実に60%以上の企業で「手戻り」が生じたということです。

さて、要件を明確にした後に、業務を見える化するためには、個々の業務内容、及び個々の業務時間を明確にすることです。しかし、その前に業務分類ごとの業務時間を明確にします。詳しい方法は、「2-5 業務時間の設定」をご覧ください。業務分類ごとの業務時間が明確になれば、それに賃率を掛ければ業務コストが計算できます。つまり、業務分類ごとのコストが明確になります。

これが明確になっただけで、かなりの改善・効率化の検討が可能です。なぜなら、重要でない業務に多くのコストをかけているとか、逆に重要な業務にあまりコストをかけていないことが分かるからです。この典型的な例が、多くの企業では予算編成に全業務コスト(人件費)の15%~20%をかけているということです。その逆に、新規顧客開拓や新製品開発に3%~5%位しかかけていないことです。つまり、多くの企業では後ろ向きの業務に多くのコストをかけ、前向きの業務にコストをほとんどかけていないのです。これでは企業は成長・発展しません。

次に、個々の業務内容が誰にでも分かるようにします。つまり、誰もがその業務をマネできるくらいに詳しく記述するのです。例えば、「〇〇報告書作成」の場合、この業務を、(1)△△を見る、(2)△△について考える、(3)△△について書く、(4)△△を見直す、(5)△△を書き直す・・・・・・のように誰が見てもその業務内容(方法)が分かるように分解して記述するのです。具体的な方法は、「2-6 業務内容の記述」をご覧ください。

業務内容の記述は、言ってみれば業務マニュアルの原稿を作成するようなものです。業務マニュアルは新入社員教育や業務の引き継ぎを行う時だけでなく、業務の改善・効率化をする時にも必要です。また、当然、業務の管理にも必要です。なぜなら、業務マニュアルは業務内容(方法)が詳しく書かれているわけですから、業務内容(方法)を改善することによって、業務の品質、納期、原価などを改善することができるからです。

ところが、ホワイトカラーの多くの人たちは業務内容を記述したことがありません。なぜなら、業務を行う都度、各自の経験と勘によって業務内容(方法)を決めているからです。よって、「業務内容を記述することなど面倒だ」と言う人が多いです。そういう人は、例えば、工場現場の作業マニュアルを参考にしてください。工場現場では、図面及び仕様書を基に作業方法を決め、作業マニュアルを作成しています。作業方法が決まらなければ作業ができませんし、作業計画を立てることも、作業管理をすることもできないのです。

このことは、流通(卸、小売り)業においても、サービス業においても全く同じです。売上が増えるか減るは販売戦略だけでなく販売方法によっても異なります。担当者任せでは売上は増えません。よって、最も売れる販売方法を決め、販売マニュアルを作成しているのです。よって、デスクワークにおいても、業務要件を基に、業務方法を決め、業務マニュアルを作成すべきです。そして業務計画を立て、業務管理をきちんと行うべきなのです。

ところが、筆者の知る限り、業務マニュアルを作成し、業務計画を立てて業務管理をきちんと行っている企業はほとんどありません。大企業でもあまり行っていません。チーム(係)ごとに日々の業務計画を立て、チームメンバーが協力して業務を進めている企業はありますが、課や部単位で業務計画を立て、業務管理を行っている企業はあまりありません。大企業においても、業務管理は業務を実施する担当者が自ら行うか、直属の上司が行っている企業がほとんどです。

一方、工場では、どこの企業の工場でも、製品ごとの加工・組立計画を、大日程計画(3ヶ月、又は半年)、中日経計画(1ヶ月)、小日程計画(1週間)などと大まかな計画から詳細な計画まで立案し、工場全体で納期(工程)管理を行っています。なぜなら、絶対に納期遅れがないように、そして顧客に迷惑をかけないようにしているからです。

また、品質管理も原価管理も専門の部署を設けて管理しています。これらの管理はもちろんホワイトカラーが行っているのですが、直接部門(ブルーカラー)の作業を対象とした管理です。ホワイトカラー自身が行う業務を対象とした管理ではありません。ホワイトカラーが行う業務の管理を専門の部署を設けて行っている企業は筆者の知る限りありません。

そのため、ホワイトカラーが業務ミスをしたり、業務遅れが生じたりしてもあまり問題にはなりません。既に書いたようにそれを直接部門に責任転嫁することができるからです。管理者の管理が悪いにもかかわらず、直接部門の作業が悪いからだと責任転嫁するのです。管理が悪かったとは絶対に言いません。業務ミスや業務遅れがあれば直接部門にしわ寄せが行き、結果的に顧客にも迷惑をかけることになるのです。ホワイトカラーの業務管理が工場の作業管理に比較すると、いかにいい加減であるかが分かると思います。

3.本書に書いた方法で業務を見える化すれば改善・効率化が容易にできる。

既に書いたように、製造業においては多品種少量生産や製品の高付加価値化が進展したため、製造原価に占める製造間接費の割合が増大しています。また、経済のサービス化が進展したため、卸・小売業やサービス業が増加し、また総原価に占める一般管理費が増大しています。つまり、ホワイトカラーの人件費が増大しているのです。それにもかかわらず、ホワイトカラーが行うムダな業務を廃止・削減しようとしないのはなぜでしょうか。それは、前回も書きましたように、業務の見える化が難しいからです。そこで、本書で説明する方法で業務の見える化を行って下さい。そうすれば、改善・効率化が容易にできます。

ちなみに、ホワイトカラーの業務別コストを計算する方法としてABC(活動基準原価計算)が知られています。しかし、ABCの専門書には、ホワイトカラーの全員の1年間のルーティンワークの業務別コストを計算する方法は書かれていません。せいぜい、業務日誌に業務内容と時間を記入するという方法が書かれているだけです。

よって、この曖昧な方法では業務時間の重複や空白が生じてしまいますので、正確な業務別コストは計算できません。また、現状業務の見える化に1年かかってしまいます。なぜなら、1年に1回しか行わない業務もあるからです。つまり、1年間のすべての業務内容と時間を見える化するのに1年かかってしまうのです。そのうえ、翌年には業務要件も業務内容も業務時間も変わってしまう可能性があるので、見える化しても改善・効率化が十分にできないのです。

さらに、問題なのは、ムダな業務を見える化する方法がABCにはないということです。なぜなら、あるべき業務の考え方がABCにはないからです。あるべき業務の考え方がないということは、ムダな業務が分からないということになり、結局、業務効率化も業務改革もできないということになります。そこで、筆者はVE技術を活用して業務の目的別・機能別原価計算を行うことにしました。つまり、製品のコスト削減や製品開発に使われている原価計算の方法を業務に適用したのです。ですから、VE技術者であれば誰もが知っている技術です。詳しくは「3-6 業務の目的別・機能別原価計算(1)」「3-7 業務の目的別・機能別原価計算(2)」をご覧ください。

さて、本書で説明する方法で行えば、1年間の業務を見える化するのに、1人平均、約15時間でできます。しかも、同時にムダな業務を見える化できるので、見える化すればすぐに改善・効率化の作業に取り掛かることができます。よって、その後は、ムダな業務を廃止・削減していけば良いわけですから、業務時間がしだいに減って行きます。そして、通常、ほとんどの企業では、ホワイトカラー全員の全業務量の20%~25%の削減ができるわけです。

業務効率化活動は、通常、6ヶ月で終了しますので、活動を始めてから半年後には、業務量の20%~25%、つまり、人件費の20%~25%の削減ができることになるわけです。ただし、業務を実施する時期が来なければ実際の削減はできません。なお、削減できた数値は筆者がこれまで行って来た数十社のクライアント企業の実績値です。

ところで、周知のことですが、工場現場ではムダな作業を廃止・削減するために作業の見える化を徹底的に行っています。まず、工程単位の大まかな分析である工程分析を行って、付加価値のないムダな工程(作業)を廃止・削減します。次に、付加価値のある各工程について、要素作業別の時間をストップウオッチなどで測定(時間測定)するとともに、作業方法を人の動作の単位まで分析(動作分析)して、少しでもムダな作業や動作がないかを調査・分析します。そして、ムダな作業、あるいは動作を発見して廃止・削減していくのです。このように、少しでもムダを発見して廃止・削減しようと大変な努力を行っています。ですから、工場の現場では改善・効率化が進むのです。

その一方で、ホワイトカラーは何をやっているのでしょうか。ホワイトカラーの生産性が低いのは、何度も書きますが、ムダな業務を廃止・削減しようとしていないからです。工場現場では機械化、IT化(情報化)を進める前に、必ず徹底的に改善(KAIZEN)を行います。しかも、日常の作業として改善を行っています。

ところが、経営管理部門(ホワイトカラー)の業務分掌規程を見ると、ほとんどの企業では「業務改善」や「業務効率化」という名称の業務が書かれておりません。つまり、改善・効率化を行っていないということです。また、「業務管理」という業務もありません。例えば、生産管理部門の業務分掌規程を見ると「作業改善」や「作業管理」という業務は書かれていますが、「業務改善」や「業務管理」という業務は書かれていないのです。つまり、工場現場の作業は改善や管理をするけれど、自部門の業務は改善や管理をしないということです。

このことは、人事部門でも総務部門でも財務部門でも全く同じです。自部門の業務の改善・効率化や業務管理は行っていないのです。そして、経営管理部門(ホワイトカラー)の業務の改善・効率化と言えば、情報化・システム化とか、情報機器の利用となってしまうのです。頭を使って創意工夫をして、ムダな業務を廃止・削減しようとしないで、金を使って業務処理スピードを速くしようとするのです。

しかも、個々の業務の処理スピードが速くなっても、実際には1日だらだらと長時間かけて業務を行っているのです。これではいつまで経ってもホワイトカラーの業務の改善・効率化はできません。つまり、いつまで経ってもホワイトカラーの生産性は向上しないのです。

本書に書いてある方法で業務効率化活動を行えば、容易にムダな業務の廃止・削減ができます。しかも、頭を使って行うので、投資金額0円で、20%~25%の業務量が削減できるのです。それだけではありません。この方法を習得すれば、今後、2度とムダな業務を指示命令したり実施したりすることがなくなります。なぜなら、本書に書いてある方法は業務に対する考え方・価値観を変える方法だからです。

頭を使って行うので小手先の改善・効率化ではありません。と言っても難しい方法ではありません。当たり前の考え方・方法で当たり前のことを実施するだけです。ですから誰にでもできる方法なのです。社長以下ホワイトカラー全員のムダな業務を自分で廃止・削減する方法です。その方法を本書に詳しく書きましたので、本書を活用してムダな業務を徹底的に廃止・削減して下さい。

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