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2-2 業務を見える化する技術

(1)活動基準原価計算(ABC)では業務を見える化できない。

ホワイトカラーの業務別コストを計算する方法として活動基準原価計算(ABC)が知られています。しかし、ABCの専門書には、ホワイトカラーの1年間のルーティンワークの業務別コストを計算する方法は書かれていません。せいぜい、特定の業務について、業務日誌に業務内容と時間を記入しておき、その時間に賃率を掛けて業務コストを算出するという方法が書かれているだけです。

よって、このような方法では1年間の業務別の時間に重複や空白が生じてしまいますので、正確な業務別コストが計算できません。なぜなら、ABCには業務の分類基準がないからです。

それに対し、工場における直接作業では、IEによる作業分類基準に基づいて作業を分類し、作業分類ごとに作業時間を測定します。よって、重複のない作業時間が測定できるので、作業別コストも算定できるのです。このために、製品別個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算などができるのです。詳しくは『文科系のためのコスト削減・原価計算の考え方と技術』をご覧ください。

また、ABCの方法では現状業務の見える化に1年かかってしまいます。なぜなら、1年に1回しか行わない業務もあるからです。つまり、1年間のすべての業務内容と時間を見える化するのに1年かかってしまうのです。そのうえ、通常、翌年には業務要件が変るので、業務内容も業務時間も変わってしまうのです。

さらに、問題なのは、ムダな業務を見える化する方法がABCにはないということです。なぜなら、あるべき業務の考え方がABCには存在しないからです。「業務とは本来どうあるべきか」の考え方がないということは、何がムダで何がムダでないかが分からないということであり、結局、ABCでは業務効率化も業務改革もできないということになります。

(2)IE(管理工学)とVE(価値工学)を用いれば業務を見える化できる

そこで筆者は、主に工場の現場作業の改善に用いるIE(インダストリアル・エンジニアリング:管理工学)と、主に製品のコスト削減や製品開発に用いるVE(バリュー・エンジニアリング:価値工学)とをホワイトカラーの業務(デスクワーク)に適用することにより、業務の効率化や業務改革ができるようにしました。

なぜなら、IEもVEもあるべき姿に対する考え方があり、あるべき姿と現状実態とを比較して改善・開発を行う技術だからです。

その際に、これらの技術をデスクワークにそのまま適用するのではなく、デスクワークに適した方法に変更すると共に、誰にでも簡単に、これらの技術を活用できるようにしました。なぜなら、デスクワークを改善・効率化するのはIEやVEの専門家ではなく、ホワイトカラー自身であり、自分が行う業務を自分で改善・効率化できなければならないからです。

さて、IEの目的は付加価値の向上です。よって、IEでは、何はさておき作業の価値分析を行います。IEは、工程⇒単位作業⇒要素作業⇒動作、と順に調査・分析して、価値のないムダな作業や動作を発見して廃止・削減するという技術です。すなわち、広範囲の作業単位(工程)から順に、小さな作業単位(単位作業)、詳細な作業単位(要素作業)、最小の動作の単位へと調査分析していきます。また、価値のある作業や動作については、創意工夫によって、世界で最も良い方法(One best way)にする技術でもあります。

したがって、IEにおける作業のあるべき姿とは、全くムダがないと考えられる作業方法で行った時の作業を言います。このあるべき作業を基に標準作業方法を設定し、標準作業方法を基に標準作業時間を設定し、この標準作業時間を基に標準原価を設定します。つまり、標準原価とはあるべき姿における原価を表しています。

一方、VEの目的は製品の価値向上です。この価値は、企業が追及する価値ではなく、顧客が求める価値です。この点がIEとは異なります。IEの目的は付加価値の向上ですから、企業が追及する価値です。

VEでは製品の価値を高めるために、常に顧客の立場で考えます。製品の使用目的を果たすために、顧客(製品の使用者)が求める機能を過不足なく備えるようにします。そのため、製品や各部品の目的と機能を追求します。そして、既存製品の中に無用機能、過剰機能、重複機能、不足機能などを発見すれば、廃止・削減したり追加したりします。

よって、VEにおける製品のあるべき姿とは、製品に無用機能、過剰機能、重複機能、不足機能などがないことです。つまり、顧客が求める機能を過不足なく備えている製品をあるべき姿と考えます。また、機能を果たすために最も適した構造や仕組み、及び最も適した材料や加工方法を世界中で探索したり、創意工夫したりして製品づくりを行います。VEではこのような考え方と方法で、製品の開発・設計を行います。これがVE技術です。

IEもVEも専門的な工学技術であり、習得するには多くの知識・経験が必要です。よって、それぞれに専門家がいます。IEの専門家は主に工場現場の改善に従事し、VEの専門家は主に製品のコスト削減や製品開発に従事しています。

したがって、これらの技術をホワイトカラーの業務に適用するためには、IEとVEの両方の技術を習得しているだけでなく、ホワイトカラーの業務にも精通していなければなりません。そのうえ、文科系の人でも、IEやVEの技術を業務に適用できるようにしなければなりません。

そこで、筆者はIEとVEの技術の長所と短所を踏まえて、ホワイトカラーの業務(デスクワーク)の改善・効率化が誰にでもできるようにしました。それを本書に詳しく分かりやすく書きました。よって、本書を見ながら業務の改善・効率化を行って下さい。

ちなみに、IEとVEの技術について、詳しくは、『文科系のためのコスト削減・原価低減の考え方と技術』に書きましたので参考にして下さい。文科系のために分かりやすく書きましたので誰にでも分かると思います。

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