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第2章 現状業務の効率化(ムダな業務の削減)

2-1 現状業務の見える化が難しい理由

ホワイトカラーの業務(デスクワーク)については昔からほとんど改善・効率化が進んでいません。単に、情報化(IT化)や情報機器の利用が進んだだけです。つまり、情報化(IT化)や情報機器の利用によって業務処理のスピードが速くなっただけなのです。

そのうえ、IT化や情報機器の利用によって、ムダな業務まで処理スピードを速くしたために、ムダな業務がいっそう見えなくなってしまったのです。

さらに悪いことに、業務をIT化して業務の処理スピードを速くしても、業務時間は変わらないのです。なぜなら、デスクワークと言うのは伸縮自在だからです。短時間でできる仕事でも、だらだらと長時間かけて行うこともできるのです。これについては、子供の頃の勉強を思い出せば誰にでも分かると思います。大人のデスクワークは子供の勉強と同じなのです。

要するに、業務をIT化しても業務の効率化はできないのです。業務の効率化を行うには、業務の付加価値分析を行って、付加価値のないムダな業務を削除・削減するだけでなく、業務をきちんと管理しなければならないのです。なぜなら、多くの人は、どの業務に付加価値があって、どの業務に付加価値がないのかが分からないからです。つまり、ムダかムダでないかが分からないのです。そのため、ムダな業務だと知らずに、業務を指示命令したり、業務を実施したりするのです。また、多くの企業では業務の管理は行っておりません。担当者任せです。ですから、いつまで経ってもホワイトカラーの生産性が高くならないのです。

また、欧米に比較して日本のホワイトカラーの生産性が低いのは、付加価値のないムダな業務の削減を目的に、業務の見える化を行っていないからです。そのために、ムダな業務の削減ができないのです。要するに、業務の改善・効率化のためのメスを全く入れていないのです。

数十年前から、メーカーでは多品種少量生産、及び製品の高付加価値化が進展したために、製造原価に占める製造間接費の割合が高くなっています。よって、管理間接部門の業務量が増大しています。また、サービス経済化の進展により、サービス業の割合が高くなっています。これによっても、デスクワーク(業務)が増大しているのです。それにもかかわらず、業務(デスクワーク)の改善・効率化が進まないのは、単に、本気になって改善・効率化しようとしていないからなのです。

さて、業務(デスクワーク)の改善・効率化を行うには、業務の現状実態の顕在化(見える化)が欠かせません。しかし、直接部門の作業の見える化に比較して、業務の見える化は非常に難しいのです。業務効率化はムダな業務、及びムダな時間の削減ですから、まず、現状業務の内容(方法)とその時間を顕在化(見える化)しなければなりません。しかし、これが非常に難しいのです。そのため、業務の改善・効率化が進まないのです。

ちなみに、業務の情報化(IT化)が目的ではありませんので、一般的に使われている業務フロー(ワークフロー)やDFD(データ・フロー・ダイアグラム)などのUML(オブジェクト指向に基づく構造化技法)を用いてもダメです。なぜなら、これらの手法を用いてもムダな業務を発見することはできないからです。

ところで、業務フロー(ワークフロー)は昔は事務工程分析と呼ばれていました。工場現場の工程分析の手法を事務(デスクワーク)に応用したもので、日本能率協会や産業能率大学などが中心となって推進したものです。しかし、各工程(作業)の付加価値や時間を分析する本来の工程分析ではなく、形だけを真似し、業務内容を単に見える化するだけであったため、付加価値分析や時間分析は行わなかったのです。

つまり、事務工程分析は付加価値のないムダな業務やムダな時間を見える化する分析ではなかったのです。この事務工程分析がその後、簡略化され、現在は業務フロー(ワークフロー)という名称になっています。そして多くの企業で使われているのです。しかし、かつての事務工程分析と同じで、ムダな業務とその時間が見えるような分析にはなっていません。

工場現場で使われている本来の工程分析は、各工程の付加価値分析と各工程の時間を測定・分析するものです。ところが、現在、IT化のために使われている業務フロー(ワークフロー)は、付加価値分析も時間分析も行いません。単に、どのような業務をどのように行っているかを見える化するだけです。よって、このまま情報化(IT化)すれば、当然、付加価値のないムダな業務までIT化することになるのです。これではIT化しても生産性は向上しません。

実際に、現在市販されている数十社のワークフローを筆者が調べたところ、付加価値分析や時間分析を行うものは1つもありませんでした。単に、業務内容を細かく見えるようにしただけです。

また、業務フロー(ワークフロー)は業務の時間分析を行わないので、業務時間が分からないのです。つまりは業務コストが分からないわけです。情報化(IT化)しても、単に、業務の処理スピードが速くなるだけです。つまり、ムダな業務まで処理スピードを速くしているだけなのです。ということは、ムダな業務にわざわざ金をかけてIT化しているのです。二重のムダです。愚かと言うほかありません。そのうえ、業務時間は担当者の自由に任されているので、IT化しても業務時間は変わらなのです。

では、なぜ、多くの企業では業務の付加価値分析や時間分析、あるいは業務の管理ができないのかでしょうか。それは、ムダな業務を発見したり、業務別の時間を測定するのが難しいためです。また、安易に金をかけて業務をIT化してしまい、これまで業務の付加価値分析や時間分析、あるいは業務管理の努力(創意工夫)を全く行って来なかったからです。その理由は、

  1. 業務を行う都度、業務内容が異なるから、また、そのため業務時間がその都度異なるから。
  2. 同じ業務を行っていても、人により業務時間が大きく異なるから。
  3. 各人がいろいろな業務を並行して行っているから。

などです。まず、1つ目の理由についてですが、業務というのは繰り返し行うルーティングワークでも、その内容がそのたびに異なります。例えば、毎日行う「受注処理」でも、受注する内容は受注のたびに異なりますから、受注処理時間が常に異なるのです。

これに比べて、工場の直接作業の場合には、例えば、同じ部品を複数個作る作業は、作業内容(方法)がどれも同じですから作業時間もほとんど同じです。よって、10回作業を行って、10個の部品を作り、それぞれの時間を測定し、10で割って平均し、その作業の平均作業時間とすることができます。

次に、2つ目の理由、「人によって業務時間が大きく異なる」についてですが、例えば、同じ「出張報告書の作成」でも、Aさんは3分でできる、Bさんは30分かかる、Cさんは3日かかるというように、人により大幅に時間が異なるのです。これは、

  1. 各人の業務処理能力が異なるから。つまり、各人の業務に対する知識・経験、熟練度、思考・判断能力などが異なるから。
  2. 各人の業務処理方法が異なるから。
  3. 各人の業務の優先度・重要度により、時間のかけ方が異なるから。

などの原因があります。直接作業の場合にはこのようなことはあまりありません。なぜなら、作業者の経験や熟練度によって、実施する作業を選定し、そのうえ、作業ごとに、作業方法を決め、作業計画を立て、作業管理を行うからです。また、人により作業時間が異なっていても、デスクワークに比較するとそれほど大きな差はありません。

よって、作業者の熟練度や体調を考慮し、休憩などの余裕時間を加味すれば、その作業の標準時間を設定することができます。実際に、工場現場ではこのようにして作業の標準時間を設定しています。そして、作業ごとの標準時間を基に、製品ごとの標準時間を設定します。製品ごとの標準時間が設定できれば、製品ごとの生産計画、要員計画なども設定できます。また、この標準時間に賃率を掛ければ、製品ごとの標準原価が設定できます。つまり、作業の標準時間は工場管理の基礎データとなるのです。したがって、作業の納期管理や原価管理も標準時間を基に行うことができるのです。

しかし、デスクワークの場合はこのようなことができません。デスクワークでは業務を行う都度、その内容も時間も異なるので業務の標準時間を決めることができないのです。毎日繰り返し行う業務についてはまだ良い方で、週に1回行う業務、月に1回行う業務、半年に1回行う業務、1年に1回行う業務と頻度が少なくなるにつれ、一層その内容が変わりますし、時間も変わります。担当者も変ってしまいます。

例えば、通常1年に1回行う「経営計画の策定」や「予算編成」などを考えてみればお分かりかと思います。年によって業務内容及び業務時間が大きく異なり、数年分の時間を平均するというわけにもいかず、結局、平均的な業務時間を決めることができないのです。また、たとえ、その年の実際の業務内容、及び業務時間を基に、問題点を発見して改善案を作り、翌年その改善案を実施しようとしても、内容も時間も変わっているのです。よって、改善が実施できなかったり、仮に改善が実施できたとしても、改善効果が分からなくなったりしてしまうのです。

最後に、現状業務の顕在化(見える化)が難しい3つ目の理由、「各人がいろいろな業務を並行して行う」についてですが、いろいろな業務を並行して行えば、各業務と時間との関係を正確に捕えるのが難しくなります。よって、ほとんどの企業では通常は正確には捕えていません。せいぜい、日報に概略の時間を記録する程度です。ところが工場現場では、並行作業を行う場合でも、作業と時間について正確に測定・記録しています。例えば、作業者1人で複数台の機械を同時に動かして、同じ部品を複数個作ったり、異なる加工方法で複数の加工を同時に行ったりする場合です。これを多台持ち作業と言います。

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