次ページ  目次

経営相談どっと混む

1-3 経営者が参加しない業務効率化活動は成功しない

業務効率化(ムダな業務の削減)活動は経営者が参加しないと成功しません。なぜなら、ほとんどの業務は経営者の指示・命令に基づいて行われるからです。たとえ、経営者の直接的な指示・命令によらない業務であっても(例えば、法律に基づく業務、業界組合や取引先等から要求される業務、顧客から要求される業務など)、基本的には経営者の指示・命令に従って行っているからです。

よって、ムダな業務を指示・命令しているのも経営者ですし、これによって業績を悪化させているのも経営者ということになります。したがって、経営者の考え方・価値観が変わらないと業務効率化(ムダな業務の削減)はできないのです。

そこで、まず、活動が失敗する場合を説明しましょう。一つは、業務効率化活動の始めのうちは、社長も役員も活動を積極的に推進するのですが、活動が進むに従い、社長や役員の考え方・価値観に問題があることが分かり、このことを隠すために途中で活動を中止したり、あいまいに終わらせてしまったりする場合です。

もう一つは、活動の途中から社長や役員は参加しなくなり、そのまま部門長以下で最後まで活動を行なう場合です。これは、社長や役員にとっては都合の良いやり方です。つまり、部門長以下が指示した業務だけを対象に効率化活動を行うわけです。そして、各部門でムダな業務の削減を行い、部内の人員削減と部門間の人員の再配置を行おうとするのです。

この場合に失敗する原因は、第一に、社長や役員が指示した業務は効率化の対象にならないわけですから、効率化(ムダな業務の削減)がほとんどできないからです。部門長以下が独自に指示した業務というのは会社全体の数パーセントに過ぎません。

第二に、どの部門も自部門だけは人員削減したくないですから、効率化しようとしないからです。部門ごとに何人あるいは何パーセントかの人員削減の目標を決めて行う場合もありますが、どの部門も人員削減したくないですから目標が決まらないのです。それで、強制的に削減目標を一律〇〇パーセントとする場合がありますが、もともと適正人数が決まっているわけではないので不公平になってしまいます。また、効率化の成果に比例して人員削減しようとすれば、どの部門も効率化しなくなります。

第三に、これが最も大きな失敗する原因となりますが、社長や役員の考え方・価値観が変わらないからです。たとえ、活動が無事に終了し、一時的、かつ部分的に効率化できたとしても、すぐに元の状態に戻ってしまいます。仕事は社長や役員など上から指示命令されますが、何がムダで何がムダでないかを明確にしない限り、ムダな業務は何度でも指示されることになるのです。ですから、社長や役員の考え方・価値観が変わらないとダメなのです。したがって、経営者が参加しない業務効率化活動は必ず失敗します。

次に成功する場合を説明します。まず、社長がリーダーシップを取って積極的に活動を行う場合は間違いなく成功します。例えば、社長がコンサルタントの話をいつも最前列に座って聞いている企業があります。そして、社長自身が指示した業務を見直し、ムダな業務を廃止あるいは簡素化して時間削減するのです。社長が積極的であれば他の役員も部・課長たち幹部も積極的にならざるを得ないでしょう。そうすれば、当然、全社一丸となって業務効率化活動を推進することになります。このような会社は一部上場企業に多いです。それは、一部上場企業に限らす、大企業のほとんどの社長がサラリーマン社長だからでしょう。業績が悪化すれば最終的には社長の責任となりますから、業績を上げるために積極的に活動に取り組もうとするのです。

ところで、コンサルタントの話は、活動の考え方や進め方以外は先進企業の事例ですから、他社でどのように業務を行っているかが具体的に分かるわけです。したがって、参考になる事例が多いはずです。例えば、筆者の場合は先進的な他社事例を100社以上は紹介します。コンサルタントの役割はひと言で言えば提案と助言ですが、提案と助言ができるのはいろいろな企業でコンサルティングした経験があるからです。早い話が、先進企業から学んだものを他の企業に伝えているだけなのです。ただし、公開された事例、あるいは公開の許可を受けた事例だけです。

しかしながら、実際には、コンサルタントの話を社長が最前列で聞くような企業はほとんどありません。中小企業のようにオーナー経営者の場合は特にそうです。コンサルタントなど、どこの馬の骨かわからない人間に、我が社のことが分かるわけがないと多くの経営者は思っています。しかも、どの中小企業の社長もプライドが非常に高いですから、コンサルタントの話を面と向かって聞こうなどという気はさらさらありません。

しかし、他社の先進事例は知りたいのです。そこで、コンサルタントが話をする時には社長は出席せず、話をビデオに録らせておいて、後日、社長室でビデオを見るという社長が大勢います。あるいは、他の従業員には分からないように、いつの間にか社長が一番後ろの席に座って聞いており、また、いつの間にか退席するという社長もいます。あるいは、出席の状況を確認するためという理由で、社長がときどき後ろの隅っこの席に座る場合もあります。いずれも場合でも、社長が参加しているわけですから成功します。他社の先進事例を多く知れば知るほど、社長の考え方・価値観が変わる可能性があるからです。

ただし、他社の先進事例はあくまで事例であって、考え方・価値観が変わっても自社にそのままあてはまるわけではありません。よく、他社事例をマネしようとする企業がありますが、それは絶対にできません。自社と他社では、経営理念、経営環境、経営戦略などが違いますし、人・モノ・金・技術・情報・文化などの経営資源が異なるからです。自社の改善・改革は自社で努力しなければできません。まして、ITを導入しただけでできるわけがありません。

Ⓒ 経営相談どっと混む

次ページ  目次