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1-2 ホワイトカラーの生産性を高くするには

(1)ホワイトカラーとは

本書では、ホワイトカラーとは、経営者及び管理間接部門の人、言い換えれば経営管理を行う人、すなわち経営管理者を言います。一方、製造や販売を直接行う作業者をブルーカラーと呼びます。

つまり、本書では、一般的な定義である、「ワイシャツを着て仕事をする人をホワイトカラーと呼び、作業着を着て仕事をする人をブルーカラーと呼ぶ」とは異なります。例えば、ワイシャツを着て販売を行う人はホワイトカラーとは呼びません。

また、本書では部門についてもホワイトカラー、及びブルーカラーと呼ぶこともあります。つまり、経営管理部門、又は管理間接部門をホワイトカラー、直接部門をブルーカラーと呼びます。また、ホワイトカラーが行う仕事をデスクワーク、あるいは業務と呼び、ブルーカラーが行う仕事を作業と呼びます。

(2)ホワイトカラーの生産性とは

経営管理者(ホワイトカラー)の生産性が作業者(ブルーカラー)の生産性より低いということは、昔から言われています。しかし、その根拠はあいまいです。昔から、多くの学者や研究者が、ホワイトカラーの生産性を測定するための研究を行っていますが、未だに誰もが納得できる方法はないようです。

実際に付加価値(稼ぎ)を生み出しているのはブルーカラー(直接部門)です。では、ホワイトカラー(経営管理部門)は何をしているのでしょうか。下記の図をご覧ください。ホワイトカラーは直接部門のために働いているのです。直接部門が多くの付加価値(稼ぎ)を生み出せるように支援するのがホワイトカラーの仕事です。よって、ホワイトカラーのユーザーは直接部門です。

直接部門では顧客に対して商品を製造・販売したり、サービスを提供したりして付加価値(稼ぎ)を生み出します。直接部門では付加価値(稼ぎ)をできるだけ多くするために、売上や営業利益を増やそうと努力します。この支援をするのがホワイトカラーです。

よって、この支援によって、どの程度、付加価値が増加し、生産性が高くなったのかを測定すれば、ホワイトカラーの生産性が分かるのです。

労働生産性=付加価値/従業員数(ホワイトカラー+ブルーカラー)

ホワイトカラーの労働生産性=付加価値/ホワイトカラー

ブルーカラーの労働生産性=付加価値/ブルーカラー

しかし、付加価値をホワイトカラーが生み出した分とブルーカラーが生み出した分とに分けることはできません。付加価値はホワイトカラーとブルーカラーとが協力して生み出した会社全体の価値からです。

そこで、ホワイトカラーを増減した場合の付加価値の増減額とブルーカラーを増減した場合の付加価値の増減額をそれぞれ計算します。つまり、ホワイトカラーを◯◯人増やしたら、又は減らしたら、付加価値が◯◯円増えた、又は減った。ブルーカラーを◯◯人増やしたら、又は減らしたら、付加価値が◯◯円増えた、又は減った、という具合に計算すれば、それぞれの生産性の増減率が分かります。この計算によって、どちらが生産性が高くなったかが分かるのです。すると、多くの企業ではホワイトカラーの生産性はブルーカラーの生産性よりはるかに低いのです。

(3)ホワイトカラーの生産性がブルーカラーの生産性より低い理由

では、なぜホワイトカラーの生産性がブルーカラーの生産性より低いのでしょうか。ホワイトカラーの主な業務の1つは、直接部門の作業管理です。例えば、製造業では顧客が求める良い製品を安く速く顧客に届けるために、品質管理、原価管理、納期(工程)管理などを行っています。これらの管理はホワイトカラーの業務です。

ところが、ホワイトカラーは、業務の管理は行っていません。つまり、ホワイトカラーは直接部門の作業管理は行っていますが、自分が行う業務の管理は行っていないのです。これは重大な問題です。なぜなら、成り行き任せになるからです。ではなぜ、ホワイトカラーは自分が行う業務の管理を行っていないのでしょうか。その理由は、管理しなくても問題にされないからです。ホワイトカラーのユーザーは顧客ではなく、直接部門だからです。

しかも、ホワイトカラーは自分が行っている業務は管理しなくても良いとさえ思っているのです。その原因はホワイトカラーにはおごりと甘えがあるからです。自分たちは経営管理者であり、作業者ではないというおごりです。自分たちは頭脳労働者であり肉体労働者ではないと言うおごりです。

また、管理(業務)ミスがあっても直接部門の作業者は黙認してくれる、あるいは許してくれる、という甘えがあります。実際に、直接部門の作業者から文句を言われることはないのです。作業者から見れば相手が経営管理者なので文句を言えないのです。そのうえ、そもそも経営管理者は管理されたくないのです。

一方、直接部門の作業者には、おごりや甘えは一切ありません。常に、謙虚に、作業をしています。そのうえ、自分の製造技術や販売技術に誇りを持っています。実際に、製造技術がなければ製造できませんし、販売技術がなければ販売できません。よって、経営管理者が有する経営管理技術と、作業者が有する製造・販売技術とは企業にとっては車の両輪であって、どちらも重要です。つまり、経営管理者(ホワイトカラー)と作業者(ブルーカラー)とは対等なのです。

ところが、ホワイトカラーは、例えば、製品の品質が悪くなった場合に、それは品質管理が悪いのではなく、作業が悪いのだと、作業者に責任転嫁してしまうのです。しかも、作業者はそれを容認してしまうのです。なにしろ、作業者は管理される立場ですし、経営管理者には文句を言えないのです。

ホワイトカラーの業務である品質管理をきちんと行わなければ、製品の品質が悪くなり、それだけ会社の売上や利益が減り、付加価値が減ってしまいます。もし、不良品を顧客に売ってしまえば、大変な問題になります。顧客はその会社の製品を買わなくなり、売上がガタ落ちし、場合によっては会社が倒産する危険すらあります。ところが、ホワイトカラーは自分の不手際を作業者に責任転嫁してしまうのです。

また、ホワイトカラーは自分の業務の原価管理を行っていません。ホワイトカラーは製造原価を下げる努力を行っていますが、自分が行う業務のコストを下げる努力は行っていないのです。それどころか、業務コストがいくらなのかすら分からない状態です。

例えば、個々の製品の設計にいくらかかるのか、生産計画の立案にいくらかかるのか、などはよく分かりません。まして、経営計画を立てるのにいくらかかるのか、予算編成にいくらかかるのか、などは分かりません。なぜなら、通常、これらは計算しないからです。

また、経理部門にいくらかかるのか、人事部門にいくらかかるのか、総務部門にいくらかかるのかなども分かりません。つまり、これらの部門別コストがいくらなのかも分からない状態なのです。なぜなら、これらの部門別コストは製造原価の計算には関係がないからです。

通常、製造原価を計算するために、製造にかかわる部門の部門別原価計算を行います。例えば、資材調達部門、設計部門、品質管理部門、原価管理部門、工程管理部門などの部門別原価を計算します。しかし、製造原価の計算には関係がない経理部門、人事部門、総務部門などの部門別原価計算は通常行いません。これらは、一括して一般管理費としてどんぶり勘定を行っているからです。

一方、直接(製造)部門ではどうでしょうか。製造部門では部門別だけでなく、職場別、工程(作業)別の原価を正確に捕えています。そのために、作業時間を常に正確に測定します。例えば、ストップウオッチを使って◯分◯秒かかったかを測定します。それに時間当たり賃率を掛ければ作業別のコストが分かります。よって、作業に少しでもムダが発見できれば、コスト削減ができます。この仕事を行っているのはホワイトカラーです。

しかし、ホワイトカラーは自分が行う業務の時間(コスト)については測定していませんし、また、ほとんど管理していません。つまり、業務の納期(工程)管理や原価管理をほとんど行っていません。また、いつまでに業務を終わらせれば良いのか、つまり、納期はいつなのかを予め決めていません。上司や直接部門などから督促されて慌てて行うのが実態です。

以上のように、ホワイトカラーが行う業務については、品質管理、原価管理、納期(工程)管理などをきちんと行っていないのです。すべての業務が、よく言えば自己管理であり、悪く言えば成行き任せなのです。

一方、直接部門では、品質管理、原価管理、工程(納期)管理などの重要な管理は部門を設けて専門に行っています。つまり、品質管理部、原価管理部、工程(納期)管理部などが、管理をきちんと行っているのです。ほとんど管理しないホワイトカラーの業務と、きちんと管理する直接部門の作業とは、どちらが生産性が高くなるかは誰にでも分かると思います。

(4)ホワイトカラーの業務の生産性について

さて、ホワイトカラーが行う業務は、直接部門の作業の管理だけではありません。経営戦略の立案、事業領域の見直し、組織の再編成、人事制度の再構築、経営計画の立案、商品開発、市場開拓、顧客管理などいろいろあります。これらの業務はもちろん、付加価値を高めるために行っているのです。

ところが、これらの業務によって、どの程度、付加価値が高くなったのかは分かりません。つまり、どの程度、生産性を高めることができたのかは分からないのです。その理由は、これらの業務の生産性を測定するのが難しいからです。理論的には、

業務の生産性=付加価値/業務時間

で計算すれば、業務別の生産性が分かるはずです。よって、その業務を行った場合と行わなかった場合の比較ができます。また、年々の比較もできます。しかし、付加価値は会社全体の数値であって、業務別の付加価値ではないので、この計算式はあまり意味がないのです。しかし、その業務を行ったことによる効果はある程度分かります。つまり、その業務を行った場合と行わなかった場合とで、売上や利益がどの程度変化したかをある程度推定することはできます。

しかも、その業務が付加価値を高めているか否かは明確に分かります。つまり、売上や利益に貢献している業務なのか、それとも貢献していない業務なのかは分かります。要するに、ムダな業務なのかムダでない業務なのかは分かるのです。ちなみに、直接部門の作業の価値分析も同じ考え方です。個々の作業の付加価値は分かりませんが、個々の作業が付加価値を生んでいるか否かは分かるのです。つまり、ムダな作業かムダでない作業かは分かるのです。

これはIE(管理工学)の考え方です。IEの目的は付加価値を高めることですが、付加価値は会社全体の価値なので、作業別に付加価値を生んでいるか否かを分析するのです。そのため、工場の直接部門では、作業改善を行う時には、何はさておき、各作業(工程)の価値分析から始めます。つまり、各作業(工程)に価値があるか無いかの分析を行います。そのうえで、価値のないムダな作業(工程)については、できるだけ廃止・削減します。

価値があると考えられる作業(工程)については、さらに、詳細に要素作業まで分解して、価値があるか無いかを調べます。そして、価値のない要素作業を発見すれば廃止・削減します。価値があると思われる要素作業については、さらに動作のレベルまで詳細に分解して価値があるかないかを調べます。少しでも動作にムダがあれば廃止・削減します。このように、工場の作業については徹底的にムダを排除します。

ところが、ホワイトカラーの業務についてはどうでしょうか。各業務について価値分析を行っているでしょうか。私の30年以上の経営コンサルタントとしての経験でも、業務の価値分析を行っている企業は1社もありませんでした。何度も書きますが、企業はホワイトカラーの生産性を高める努力を全く行っていないのです。単に、業務をIT化したり、情報機器を活用したりして個々の業務時間を短縮しているだけです。

しかも、IT化によって個々の業務時間を短縮しても、業務管理を行っていないため、だらだらと長時間かけて日々の業務を行っているのです。そのうえ、ムダな業務にまで金をかけてIT化し、二重のムダを行っているのです。ホワイトカラーの生産性が直接部門に比較して低いのは当然です。

(5)ホワイトカラーの生産性を高めるには

ホワイトカラーの生産性を高めるには、まず、業務の価値分析を行い、価値のないムダな業務を廃止・削減する必要があります。次に、価値がありそうな業務について、いろいろな視点から価値があるか無いかを徹底的に調査・分析し、価値のないムダな業務を発見して廃止・削減する必要があるのです。そのうえで、本当に価値がある業務だけをIT化したり、情報機器を活用したりして業務のスピードアップを図れば良いのです。

また、業務の品質管理、原価管理、納期管理(スケジュール管理)などの管理をきちんと行う必要があるのです。このためには、ホワイトカラーのおごりと甘えを無くすことです。なぜなら、業務の価値分析や業務の管理をきちんと行わないのは、おごりと甘えが原因だからです。

経営管理部門(ホワイトカラー)のおごりと甘えを無くす手っ取り早い方法は、経営管理部門を会社から切り離して独立させることです。そして、ホワイトカラーの能力を他社と競争させるのです。そもそも、ホワイトカラーの給料は直接部門が稼いでいるのです。そこで、ホワイトカラーに対して自分の給料は自分で稼ぎなさいと言うのです。下記の図をご覧ください。

経営管理部門の独立

実際に、ホワイトカラーの業務を自社で行わずに、他社に委託している企業はたくさんあります。経理や人事の業務委託は昔から行われています。例えば、多くの中小企業では経理の仕事を税理士に委託しています。また、従業員を派遣会社から派遣してもらっている企業では、その人事管理も派遣会社に委託しています。さらに、経営管理部門のない直接部門だけの会社も昔からあります。製造だけを行う会社や販売だけを行う会社もあります。他社に経営管理してもらっているのです。

よって、仮にホワイトカラーのすべての業務を外部委託(アウトソーシング)すれば、自社ではホワイトカラーは必要なくなるわけです。もちろん、そのためには委託する経営管理会社の能力や技術をチェックできなければなりません。つまり、経営管理会社の経営能力や管理技術をチェックして、どの経営管理会社に業務委託するかを決める必要があるのです。

本書では、ホワイトカラーの生産性を高めるために、ムダな業務の廃止・削減を行う業務効率化と将来の企業の成長・発展を図るための業務改革の方法について具体的に解説いたします。

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