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第1章 業務効率化・業務改革の取組に当たって

1-1.業務効率化とは? 業務改革とは?

最近、業務効率化あるいは業務改革を実施したのだがどうもその効果がよくわからないと言われる経営者が多いです。そこで、最初に明確にしておきたいことがあります。それは、業務効率化と業務改革の目的とその違いです。これらの目的及びこれらの違いを明確にしないで活動を行っても、また、活動の目的を明確にしないで活動を行ってもその効果は明確にはなりません。

まず、業務効率化ですが、これは現状業務におけるムダな業務の廃止・削減であり、業務時間の削減です。よって、人件費の削減すなわちコスト削減が目的となります。これについては多くの企業で確認しておりますが、異論はないようです。

一方、業務改革ですが、業務改革をBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)であると勘違いしている人が多いようです。BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は、マイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピー が1993年に出版した『リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新』 が契機となって、バブル崩壊後に流行した言葉ですが、業務改革はこの本が出版されるずっと以前からあった言葉です。筆者はバブル崩壊以前から業務効率化や業務改革のコンサルティングを行っています。

ハマーとチャンピーは業務改革を「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的な成果基準を劇的に改善するために、ビジネスプロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義しています。このことから、ハマーとチャンピーによる業務改革はビジネスプロセス(業務プロセス)を抜本的に再設計・再構築することだということがわかります。

しかし、残念ながらその具体的な方法についてはこの本には何も書かれていません。 このため、ERPと結びつき、ERPパッケージソフトを導入すれば業務改革ができると思い込んでいる人が多いのです。ちなみに、ERPとは「Enterprise Resource Planning」の頭文字をとったもので、直訳すると企業資源計画となります。つまりERPパッケージとは、経営資源の最適化を実現するためのツールです。通常は、統合基幹業務パッケージと訳されます。

本来、業務改革の対象は基幹業務プロセスだけではありません。ずっと昔から行われている業務効率化や業務改革の対象となる業務は、社長以下、管理間接部門のすべての業務(デスクワーク)です。

また、業務効率化あるいは業務改革と言えば、ITを活用するというのが最近の常識のようです。しかし、高額な投資をしてITを導入しても、業務効率化や業務改革ができなかった、投資がムダになってしまったという企業が後を絶ちません。 また、ITを導入しても効果が分からないとか、現状業務を「見える化」し、「情報化」したのだけれど、何のために「情報化」したのか分からない、といった声も聞かれます。これらの原因は目的を明確にしないで、また、目的に沿った活動を行わずに、ITを導入したためです。

業務効率化や業務改革はITを活用しなくてもできるのです。むしろ、ITを活用する前に行う必要があります。なぜなら、業務効率化や業務改革は、情報システムの効率化や改革ではなく、文字通り、業務の効率化や改革であり、人の意識(考え方・価値観)の改革だからです。なぜなら、業務は人が行うのであって、ITが行うのではありませんから。ITは情報技術であり、コンピュータは道具に過ぎません。業務効率化や業務改革を行って人の意識を改革した後に、その業務に適した情報システムを導入すればより確実な業務効率化や業務改革ができるのです。

さて、筆者はこれまで多くの企業で業務効率化や業務改革のコンサルティングを行ってきましたが、業務改革を次のような目的で行っています。業務改革とは、「中期経営計画の達成」「顧客満足・従業員満足の向上」「意思決定と実行の迅速化」といった様々な目的で、経営者(社長・役員)以下、管理間接部門の業務(デスクワーク)を対象に、見直し、再構築することです。企業により目的は異なるのですが、それは対象業務の範囲(全社、本社、工場、支店など)と重点の置き所が異なるだけです。

特に、「中期経営計画の達成」を目的とした場合、計画の中にはいろいろな課題が盛り込まれており、当然、業務の対象範囲は全社となり、業務改革はいろいろな業務の再構築を行うことになるのです。よって、その活動内容はムダな業務を廃止・削減する(業務効率化)だけでなく、既存業務を強化したり新規業務を設計して業務を増やしたりします。そして、これらの業務を確実に実行できるようにするのが業務改革です。

つまり、業務改革とは基幹業務だけを再設計・再構築するのでなく、社長以下、管理間接部門すべての業務(デスクワーク)を対象に、業務を再設計・再構築することです。その結果として、業務および業務時間が全体的に増える場合もあれば減る場合もあるのです。すでにお分かりのように、業務改革そのものは目的ではありません。何のために業務改革を実施するのかを明確にして実施する必要があります。

このように目的を明確にして業務効率化あるいは業務改革を行うのであれば、その効果は明確となり効果測定はできるのです。

ちなみに、業務改善の意味は部分的に業務を改善(業務をしやすくしたり、業務ミスを減らしたり)することです。したがって、業務量の削減もあれば業務量の増加もありますが、部分的ですから効果は通常あまり多くありません。

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