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0-3 創意工夫によって(投資額0円で)業務効率化、業務改革を行う重要性

40年以上前、筆者が学生のころ、いわゆるホワイトカラー(管理間接部門)の生産性が欧米に比べて低い、また、直接部門の生産性に比べて低い、ということを学びました。それ以来、現在まで、多くの企業でホワイトカラーの生産性を向上させるためのいろいろな試みがなされました。しかし、それらの試みは成功したとは言えません。その理由は、未だにホワイトカラーの生産性が低いからです。

つまり、それらの試みが的を射たものではなかったのです。そのうえ、最近ではITの発達により、ホワイトカラーの生産性を向上させるための本来の努力、すなわち頭を使って創意工夫する努力をほとんど行っていないのです。金を使ってIT化を行い、そのうえIT任せで、本来の改善・改革を行っていないのです。その結果、未だに欧米に比べてホワイトカラーの生産性が低いのです。

また、ホワイトカラーの生産性が直接部門に比べて低いのも、やはり創意工夫をして生産性を高める努力をしていないからです。工場現場では昔から創意工夫による改善を行ってきました。現在でも、日々、創意工夫による改善を行っています。KAIZENという言葉が現在の英語の辞書に掲載されているのは、日本の工場現場の改善活動が世界に知られるようになったためです。これからもずっと工場現場では、金を使わないで創意工夫による改善・改革をしたうえで、IT化、機械化を行うでしょう。

ところで、業務効率化、業務改革と言えば、最近ではITを活用するのが当たり前という風潮になっています。しかし、業務効率化、あるいは業務改革は、本来、頭を使って創意工夫を徹底的に行った後に、金を使ってIT化する、あるいは情報機器を活用するものです。なぜなら、IT化は業務を行うための1つの手段、言い換えれば道具に過ぎないからです。どのような道具をどのように使うかは、ムダな業務を廃止・削減したり、必要な業務を設計した後に決めるべきなのです。

それにもかかわらず、ITベンダー(販売業者)の誘いに乗って、金を使ってムダな業務をIT化したり、あるいは業務実態に合わないIT化をしてしまい、ムダな投資を繰り返す企業が後を絶ちません。この原因は頭を使って創意工夫をする努力を全くせず、金を使って安易に改善・改革しようとしたためです。その典型例が、いわゆるERPパッケージを数億円も払って購入したにもかかわらず、それをほとんど使っていない企業です。自業自得と言わざるを得ません。

筆者はこれまで30年以上の間、経営コンサルタントとして一部上場企業から小規模企業まで多くの企業で、創意工夫によって業務効率化、あるいは業務改革を行うコンサルティングを行ってきました。

この本を書くきっかけは、筆者が学生時代から40年以上経っているのに、未だに欧米に比べて、あるいは直接部門に比べてホワイトカラーの生産性が低いことです。そこで、これまで行ってきた筆者のコンサルティングの考え方と進め方を整理してみました。この考え方と進め方を多くの企業で活用してもらい、ホワイトカラーの生産性を向上させ、ムダなIT投資をしないようにしていただきたいのです。

そこでまず、40年以上前から現在まで筆者が知っている業務効率化、あるいは業務改革の試み、すなわちホワイトカラー(管理間接部門)の生産性を向上させようとする試みをリストアップすると、次のようになります。

  1. 事務工程分析(IEの工程分析を事務に応用したもので現在のワークフロー)
  2. ソフトVA(製品のコスト削減技術VAを業務に応用したもの)
  3. MIC計画(IEの考え方を業務に応用したもの)
  4. DIPS(IEの考え方を業務に応用したもの)
  5. VEアプローチ(VEの考え方を業務に応用したもの)
  6. VIP(IE及びVEの考え方を業務に応用したもの)
  7. BPR(ITを活用して業務効率化を目指したもの)
これらの試みはすでに書いたように的を射たものではなかったのです。例えば、ワークフローは工場現場で用いる工程分析を事務(デスクワーク)に応用したものですが、本来行うべき付加価値分析や時間分析を行っていません。よって、付加価値のないムダな業務をIT化することになってしまいます。また、IE(管理工学)やVA(価値分析)/VE(価値工学)などの改善・開発・改革技術を活用していても、これらの本来の考え方を無視し、小手先の手法に偏っています。

また、本来、業務とはどうあるべきかについての考察が全くなされていないのです。つまり、工場現場で用いられる改善技術(IE)や、製品の改善・開発技術(VA/VE)をそのまま業務に適用してしまったのです。業務(デスクワーク)の特徴を踏まえたうえで適用しなかったため、生産性が高くならなかったのです。要するに、創意工夫をしなかったために生産性が高くならなかったのです。

特に、最も悪いのは、BPRです。BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)はアメリカのコンサルタントが日本の各社の業務改革活動を参考にして、アメリカに適した方法に作り変えたものであり、いろいろな日本の業務の問題点を具体的にどう解決するかといった考察が全くなされておりません。なぜなら、日本とアメリカでは業務に対する考え方や進め方が全く異なるからです。BPRはITを活用した業務革新を目指したものであり、日本のお家芸である改善、すなわち創意工夫による生産性向上を放棄したものであると言っても過言ではありません。

というのも、創意工夫による改善・効率化をしないで、IT化を進めたり、情報機器を活用してもそれは砂上の楼閣に過ぎないからです。業務は人が行うものでありITや情報機器が行うものではないのです。ITや情報機器は道具に過ぎないと数十年前から言われ続けているにもかかわらず、BPRに多くの企業が飛びついたのは、ITや情報機器を活用すればホワイトカラーの生産性が労せずして向上すると勘違いしたからではないでしょうか。

また、BPRに目をつけ、盛んに営業攻勢をかけているのがITベンダーです。◯◯システムの宣伝を始め、パソコン、タブレット、スマホなどのアプリの宣伝が盛んに行われています。ITベンダーの誘いに乗り、多くの企業ではムダなIT投資を行っているため、未だにホワイトカラーの生産性が低いままになっているのです。一方で、ホワイトカラーの生産性が向上している企業では、例外なく徹底的に創意工夫による改善・効率化をしたうえで、IT化を進めているのです。

まず、頭を使って創意工夫による改善・効率化を徹底的に行うべきです。それだけでほとんどの企業では全業務量の20%~25%の業務効率化ができます。要するに、人件費の20%~25%が削減できるのです。これは、筆者のコンサルティング経験による数字です。また、これまで筆者がコンサルティングした数十社の大企業においては、30%以上の業務効率化を達成しています。

業務効率化の目的はムダな業務の削減による人件費の削減でありコスト削減です。業務効率化の考え方・進め方の要点を述べると、各自が行っている1年間の業務を誰もがマネできるレベルにまで「見える化」して、それらの業務1つひとつについて徹底的にムダを排除します。ちなみに、日本の経営コンサルタントの草分けである上野陽一氏の定義によれば、「ムダとは誰のためにもならないもの」を言います。つまり、自分のためにも、人のためにも、会社のためにも、顧客のためにもならないものです。

したがって、逆に、業務1つひとつについて、誰のためになっているのかを徹底的に調査分析するとともに、業務本来のあるべき姿について、徹底的に検討します。そうすれば、ムダな業務が明確になるとともに、業務の目的、機能(役割)、方法が明確になります。人は自分が行っている業務の内容(方法)は良く知っていますが、何のために行っているのか、どのような機能(役割)を果たしているかをよく知りません。よって、ムダな業務を無意識に行ってしまうのです。

一方、業務改革の目的は企業によって異なりますが、中期経営計画の達成を目的にする企業が多いです。この場合に、業務改革の考え方・進め方の要点を述べると、まず、中期経営計画がどのようにできているかを確認します。つまり、どのような経営戦略、及び事業領域の基で、どのような理由により、そのような計画になっているのかを確認します。そのうえで、中期経営計画を達成するために、どのような組織、人事制度、業務の仕組み(業務システム)が必要かを検討しこれらを再確認します。そのうえで具体的にどのような業務が必要かを検討し業務設計を行います。なお、企業によっては、経営戦略の見直し、事業領域の見直しを行ったうえで、中期経営計画を再設定する必要があります。

中期経営計画達成のために必要な要員や時間は業務効率化によって社内から生み出します。このために業務改革と並行して業務効率化を実施するわけです。中期経営計画達成のために社内の人員だけでは足りない場合には、新たに採用するか、それとも業務を外部委託(アウトソーシング)します。なお、通常はまず、残業の削減を行ったうえで人員の再配置を行います。

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