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第2章 いろいろな原価計算とその活用

2-1 原価計算とは

原価計算とは文字どおり原価(コスト)がいくらかを計算することです。しかし、原価計算を行うのは難しいのです。特に製造業における原価計算は初学者には難しいです。

『原価計算基準』には、「この基準において原価計算とは制度としての原価計算を言う。原価計算制度は、財務諸表の作成、原価管理、予算統制等の異なる目的が、重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序である。かかるものとしての原価計算制度は、財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行われる計算体系である」と書かれています。

これまで何度か『原価計算基準』に言及しましたが、ここで改めて説明いたします。『原価計算基準』は昭和37年に旧大蔵省企業会計審議会が設定し公表したもので、従来、日本の企業で行われていた原価計算に関する慣行のうち、一般に公正妥当と認められるところを要約したものです。したがって、原価計算に関する実践規範と言えるものです。よって、すべての日本の企業はこの『原価計算基準』に基づき計算しており、簿記・会計の教科書もすべてこの『原価計算基準』に従って書かれています。

しかし、昭和37年に設定された『原価計算基準』は時代に合わなくなったので、改定が必要ですが、現在でも改定されずそのままになっています。このため多くの企業では、社外に会計情報を提供するための決算書などは、『原価計算基準』に基づいて作成しますが、社内では各社独自の方法で原価計算を行っています。

『原価計算基準』には、「原価計算制度は、財務会計機構と有機的に結びつき・・・」と書かれていますが、財務会計とは、企業外部の利害関係者(株主、税務署、銀行、取引先など)に会計情報を提供するための会計を言います。代表的な会計情報は決算書です。これに対して、企業内部の利害関係者(経営管理者、従業員など)に会計情報を提供するための会計を管理会計と言います。よって、財務会計は『原価計算基準』に従うだけでなく、商法や会社法などの法律に従って実施しますが、管理会計は会社独自の方法で実施しているわけです。

では、原価計算は何のために行うのでしょうか。『原価計算基準』にも書かれているように、「財務諸表を作成するため」「原価管理を行うため」「予算統制を行うため」などの他に、「棚卸資産の評価を行うため」「商品・製品の販売価格を決めるため」「取り扱う商品・製品を決めるため」「利益計画を立てるため」などいろいろあります。また、「商品・製品の改良や開発のため」「事業戦略を決めるため」でもあります。つまり、原価計算はいろいろな目的のために行うものです。したがって、どの企業にとっても非常に重要です。

しかし、原価計算を行うのは難しいので、実際に原価計算を行っている企業は少ないです。原価計算を行っていない企業というのは、まず、決算書を自社で作成していない中小企業です。このような企業で行っているのは、例えば、入出金の記録と領収書の保管だけ、あるいは会計帳簿があっても、現金出納帳、売上帳(又は売掛帳)、仕入帳(又は買掛帳)などの記入だけです。したがって、自社で決算できず、決算書は会計事務所で作ってもらっているのです。税理士業務の80%以上が、「顧客企業の決算書作成」だそうですから、ほとんどの中小企業がそうではないでしょうか。

この原因は簿記ができないためです。具体的には取引の仕訳ができないためです。仕訳さえできれば、会計ソフトで自動的に決算書を作ることができます。また、たとえ社内に簿記のできる従業員がいたとしても、会社の会計の実態を従業員に知られたくないために、売上の記録だけとか支払いの記録だけを従業員に任せ、その他の取引の仕訳や決算書の作成を従業員に任せていないのです。要するに、自社で決算書を作成できないのは、会社の幹部(経営者・管理者)が簿記ができないのが原因なのです。

また、たとえ自社で決算書を作成していても、メーカーでありながら商業簿記によって決算書を作成している中小メーカーがあります。例えば、決算書に添付する製造原価報告書(製造原価明細書)を作成しているだけというメーカーです。製造原価報告書を作成しているから原価計算を行っていると勘違いしている中小メーカーが多いです。要するに、簿記3級(商業簿記の基礎)のレベルなのです。こういうメーカーでコスト削減と言っても、経費削減と人員削減のことだと思い込んでいるので困るのですが、まずは原価計算の入門から始めましょう。

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