次ページ  目次
経営相談どっと混む

1-3 コスト削減・原価低減は経費削減と人員削減ではない

コスト削減と言えば経費削減と人員削減だと答える経営者が多いです。しかし、このような企業は競合他社との価格競争に勝つことはできないでしょう。なぜなら、従業員を活用していないからです。

従業員を削減するのではなく従業員を活用してコスト削減するのです。なぜなら、経費を使うのは主に従業員だからです。よって、従業員が経費削減するのです。また、製造業では当然ですが、卸・小売り業でも従業員が購買(仕入)先と協力して購買(仕入)品の原価を引き下げれば、購買(仕入)先の方から購買(仕入)価格を引き下げてくれます。そうすれば、より確実にコスト削減ができます。したがって、より低価格で販売することができ、競合他社との価格競争に勝つことができるのです。

このためには、従業員がコスト削減技術を習得しなければなりません。製造業だけでなく、卸・小売業でもサービス業でも従業員1人ひとりがコストの重要性を理解し、自らコスト削減できるようにならなければなりません。自社で商品の企画や開発・設計を行っている企業はもちろんですが、そうでない企業でも、従業員1人ひとりが企画や開発・設計段階からのコスト削減技術を習得し、コスト・マインド(コストを重視する心構え)を身につける必要があるのです。

製造業でも卸・小売業でも、単に、より安い購買(仕入)先を探したり、購買(仕入)先にコスト削減要請をしたり、購買(仕入)先と価格交渉したりするのではなく、購買(仕入)先と協力して購買(仕入)品を企画や開発・設計段階からコスト削減すれば、購買(仕入)価格を確実に引き下げることができるのです。そして、そのメリット(利益)は自社だけでなく、購買(仕入)先でも享受できます。しかも、その効果は莫大で、経費削減の比ではありません。なぜなら、製品・商品の企画あるいは開発・設計段階でほとんどのコストが決まってしまうからです。通常、

企画段階開発・設計段階材料・部品調達段階製造段階卸売段階小売段階

と、川上から川下に行くにしたがってコスト削減余地が減ってゆき、コスト削減効果が少なくなります。 したがって、コスト削減の取り組み順序は、まず、製品・商品の企画や開発・設計段階のコスト削減に取り組み、次に材料・部品の調達や製造段階のコスト削減に取り組み、そして最後に、経費削減のために業務の効率化に取り組みます。この順序で実施することにより、最も効果的にコスト削減ができるのです。

そして、これらを実施するのは従業員です。ですから従業員を活用すべきなのです。従業員を削減してしまってはこのような効果的なコスト削減ができないだけでなく、残された従業員もやる気をなくしてしまいます。仮に従業員を削減して一時的に業績が良くなったとしても、長期的には業績が一層悪化することになります。筆者の経験では、業績の良い企業の特徴は常に従業員の教育・訓練を行って、従業員を徹底的に活用している企業です。

また、ムダな経費を発生させているのは主に業務の進め方に問題があるからです。したがって、業務の効率化を行わないで経費削減に取り組んでも効果はほとんどありません。それどころか必要な経費まで削減してしまい、その結果、売上や利益を落としてしまう恐れがあります。

なお、業務の効率化について詳しくは業務効率化・業務改革をご覧ください。

さて、卸・小売業ではPB(プライベイト・ブランド)商品の企画・開発を行っておりますが、コスト削減技術がなければ、より安くてより良い商品を企画・開発したり仕入れたりすることはできません。このことを強力に押し進めている企業はたくさんありますが、典型的な例では、SPA(製造小売業)のユニクロ(ファースト・リテイリング社)です。ユニクロでは各店舗の店長や幹部は商品を販売するだけでなく、商品の企画・開発を行い、さらに定期的に工場に行って生産技術指導や生産管理を行っています。

ユニクロでは、生産技術を習得しなければ店長にはなれないということです。生産技術が分からなければ、商品の企画・開発も、販売もできない、というのが柳井社長の主張です。事業を行うのに理科系も文科系もない、必要なら何でも習得する、というのが柳井社長の考えです。ちなみに、筆者も同じ考えです。まして、製造業でありながら経営者・管理者がコスト削減技術を習得していないというのは、そもそも事業を行う気がないということです。また、コスト削減技術がなければ製品・商品開発もできません。コスト削減と製品・商品開発とは紙一重だからです。そして、これらを行うのは従業員なのです。従業員を活用できない企業は競争には勝てません。また、従業員を活用できない経営者は経営者とは言えません。

© 経営相談どっと混む

次ページ  目次